岡山市内から車で1時間ちょっと北へ走ると、 急に空が広くなる。 那岐山の稜線が目に飛び込んできた瞬間、 ここに来た理由を思い出した。 奈義は「なにもない」場所じゃない。 ただ、余白が多い場所だ。 その余白の中に、美術も、山も、古刹も、 ひっそりと息をしている。
奈義のおすすめスポット
奈義町現代美術館|この建物自体が、もう作品だ
駐車場に車を停めて、建物を見た瞬間に固まった。
美術館というより、宇宙船みたいな形をしている。
1994年開館。荒川修作+マドリン・ギンズが設計した。
入館料は600円。
中に入ると、「太陽」「月」「大地」の3つの展示室がある。
どれも、ただ絵が飾ってあるわけじゃない。
部屋そのものが作品になっている。
「太陽」の部屋は、天井に丸い穴が空いていて、
光が筒の中に差し込んでくる構造だ。
時間によって光の角度が変わる。
同じ部屋なのに、昼と夕方で全然違う顔をしている。
「大地」の展示室は床が傾いている。
歩くたびに、なんとなく体の重心がずれていく感覚がある。
不快ではなく、むしろ面白い。
館内のスタッフさんに話しかけたら、
「ゆっくり2時間いた人もいますよ」と言っている。
わかる気がした。
那岐山|標高1240m。ここの稜線は、ちょっと反則だ
登山口の駐車場は無料。朝7時に着いたら、すでに3台停まっている。
地元の人が多いらしい。
Aコース・Bコース・Cコースと3ルートある。
初心者にはCコースが歩きやすいと聞いた。
実際に歩いてみると、登り始めは樹林帯で日差しがさえぎられている。
涼しい。
1時間半ほど登ったあたりで、急に視界が開けた。
笹原の稜線が続いている。
ここが気持ちよかった。
風があって、眼下に奈義の町が小さく見える。
那岐山の山頂は1240m。
晴れていれば大山まで見えるらしい。
この日は少し霞んでいて見えなかったが、それでも十分すぎる眺めだ。
下山後、足はガクガクだ。
でも、稜線で食べたおにぎりの味は今でも覚えている。
菩提寺|古い石段を上りきった先に、静けさがある
奈義の市街地から少し山側に入ったところにある。
創建は奈良時代とも伝わる古刹だ。
正直、最初はあまり期待していない。
でも、石段を踏み始めた瞬間に雰囲気が変わった。
苔むした石が続いていて、空気がひんやりしている。
木が高く、光が細く差し込んでくる。
上り切るのに5分もかからない。
境内に入ると、本堂の前に大きな木がある。
樹齢がかなりあると見えて、幹の太さが尋常じゃない。
誰もいない。
平日の午後2時。鳥の声だけがしている。
那岐山の麓にあるこのお寺が、
昔から山岳信仰と結びついていたことが、来てみてようやくわかった。
美術館と山に注目しがちな奈義だけど、
ここに30分立ち寄るだけで、旅の奥行きが変わる。