岡山の北、中国山地の奥にひっそりとある町、新見。 派手な宣伝もない。 でも、一度入ったら忘れられない洞窟が2つある。 石灰岩が何万年もかけて作った空間は、写真では伝わらない。 肌で感じる冷気と、静寂と、水の音。 そこに立ってはじめて、地球の時間軸に触れる感覚がある。
新見のおすすめスポット
満奇洞|万葉の歌人も迷い込んだ、妖しい地底の世界
全長約450メートル。
奥に進むほど、空気が変わる。
入口付近はひんやり涼しい程度だが、
奥の水路に差しかかると体温がすっと下がる感覚がある。
気温は年間を通じて約15度。
夏に来ると、外との温度差に思わず声が出る。
足元は整備されているが、天井が低い箇所もある。
背の高い人は要注意だ。
LEDのライトが水面に反射して、洞内が青や紫に染まる。
やりすぎかな、と思いかけた瞬間に、
照明のない区間が現れる。
そこだけ、息を飲んだ。
与謝野晶子がここを訪れ、歌を詠んだ。
それが洞窟の名の由来になったという。
「奇に満ちた洞」という意味らしい。
たしかに、その通りだ。
所要時間は30〜40分。
急がずにゆっくり歩くのがいい。
井倉洞|高さ240mの絶壁の根元に、もう一つの世界があった
国道を走っていると、突然、白い断崖が目に飛び込んでくる。
高さ240メートルの石灰岩の絶壁。
その根元に、井倉洞の入口がある。
驚いたのは、洞内の垂直落差だ。
総延長約1200メートルで、高低差は90メートルある。
満奇洞とは全然違う。
とにかく、上へ上へと登る洞窟だ。
急な階段が続く。
息が上がる。
でも、振り返ると来た道が遥か下に見えて、
その非日常感がたまらない。
洞内には滝もある。
「黄泉の滝」という名前がついている。
音が反響して、思ったより迫力がある。
マイナスイオン、という言葉を使いたくはないが、
確かに顔にしぶきがかかって、気持ちよかった。
出口を抜けると外の光が眩しすぎた。
目が慣れるまで少し時間がかかった。
そのギャップが、なんかよかった。
所要時間は40〜60分。
スニーカー必須。ヒールは論外だ。
哲西きらめき広場|何もない、がここでは正解だ
哲西町は新見市の中でも、さらに山の奥にある地区だ。
「きらめき広場」という名前から、
正直なところ道の駅的な何かを想像している。
実際に行くと、広場があって、池があって、芝生がある。
それだけ、といえばそれだけだ。
でも、周囲を囲む山の緑の濃さが尋常じゃない。
秋に来たら紅葉が凄まじいだろう。
夏でも、空気が違う。
都市部のそれとは密度が違う気がした。
ここで食べた地元の農産物の直売所のトマトが忘れられない。
1袋200円。
その辺のスーパーとは甘さが別物だ。
観光地として何かを「してくれる」場所ではない。
ただ、そこにある場所だ。
でも、洞窟2つをまわってきた後に立ち寄ると、
妙に心が落ち着いた。
新見の旅の、クールダウンにちょうどいい。
そういう場所だ。