霧の朝、城が浮かんでいた。 山の上にではなく、雲の上に。 越前大野は、そういう町だ。 派手さはない。 でも、歩くたびに何かが滲み出てくる。 湧き水が道沿いに流れ、城下町の格子戸が続き、時間がゆっくり動いている。 そんな場所が、福井の山あいにひっそり残っている。
越前大野のおすすめスポット
越前大野城|雲の上に浮かぶ、天空の城へ
秋の早朝、5時半に起きた。
目的はひとつ。
「天空の城」を自分の目で確かめること。
雲海が出るのは、10月から11月の晴れた朝。
前夜に雨が降り、気温差があるほど出やすい。
その条件がそろった朝、大野盆地は一面の霧に包まれた。
展望台は「犬山」と呼ばれる山の中腹にある。
歩いて15分ほど。
息を切らして上ると、城が霧の上に浮かんでいた。
写真で見た景色が、そのまま目の前にあった。
しばらく、声が出ない。
城自体は昭和に再建されたものだが、石垣は本物だ。
慶長年間から残る野面積みの石垣が、草に覆われながらも力強く立っている。
天守からの眺めは360度。
大野の町が箱庭のように広がっている。
入場料は300円。
この値段で、この景色は反則だ。
本町通り湧水群|道端から、水が湧いている
城から下りて、町を歩いた。
すると、道の脇に水が流れている。
越前大野は「水の町」と呼ばれている。
城下町の随所に湧き水があり、今も生活用水として使われている。
本町通りには「御清水」「殿様清水」など複数の湧水スポットが点在している。
御清水は環境省の「名水百選」にも選ばれた場所だ。
でも、観光地っぽさがまったくない。
地元のおじさんが大きなタンクを持って水を汲んでいた。
そこに混じって、手で水を飲んでみた。
冷たくて、すこし甘かった。
本町通りは江戸期の町割りが残る通りで、
格子戸の商家、醤油屋、味噌蔵が並んでいる。
昭和でも平成でもない空気が漂っている。
歩いて20分あれば通り抜けられる距離だが、
気づいたら1時間以上いた。
そういう通りだ。
福井県立恐竜博物館|恐竜と向き合う、圧倒的な1時間
大野から車で約40分、勝山市にある。
日本最大級、世界三大恐竜博物館のひとつだと聞いている。
正直、「まあ博物館でしょ」。
甘かった。
エスカレーターを下ると、全長15メートルのティラノサウルスが目の前にいた。
動く。
叫ぶ。
近くにいた子どもが泣いた。
気持ちはわかる。
展示は約44体の恐竜骨格標本。
そのほとんどが「本物の化石」を含む実物標本だという。
福井で発掘されたフクイラプトルやフクイサウルスのコーナーは特に見応えがあった。
ここで発見されたから、ここで展示されている。
その事実がずっしりとくる。
入館料は一般730円。
混雑するので開館直後の9時入りがおすすめだ。
駐車場は広い。
大野とセットで回るなら、午前に恐竜博物館、午後に大野城という順が動きやすかった。