雨が多い町、と聞いている。 年間降水量は3000mmを超える。 それでも来た。 いや、だから来た。 雨に洗われ続けた港町には、どこか他の場所では嗅げない匂いがある。 潮と、魚と、山の湿気が混ざった、あの独特の空気。 尾鷲は、知る人だけがひっそりリピートする町だ。
尾鷲のおすすめスポット
尾鷲港|朝5時、セリの声で目が覚める
港に着いたのは朝6時前だ。
すでに漁師たちは動いている。
どこかで怒鳴り声がする。
セリが始まっている。
尾鷲は三重を代表する漁港だ。
カツオ、ブリ、伊勢エビ。
水揚げの種類が多い。
港の近くに「魚市場食堂」がある。
地元の漁師が普通に飯を食っている場所だ。
マグロの漬け丼が850円。
観光地価格じゃない。
それが、正直うれしかった。
丼を食べながら窓の外を見ると、漁船が行き来している。
絵になる、とか言いたくない。
生活がある、という感じだ。
朝7時には食事を終えて、港をぶらぶらした。
地面が濡れている。
前の晩に雨が降ったのだ。
でも空は晴れている。
尾鷲の朝は、そういう顔をしている。
天狗倉山|標高522m、山頂で海が見える
登山口から山頂まで、ゆっくり歩いて約1時間20分。
そんなに高くない、。
甘かった。
登山道は岩が多い。
ところどころ鎖場がある。
スニーカーで来たことを後悔した。
トレッキングシューズは必須だ。
尾鷲ヒノキの林の中を歩く。
樹齢100年を超えるものも多い。
木の間から光が差し込む瞬間がある。
足が止まる。
山頂に着いた。
大きな岩の上に立った。
眼下に熊野灘が広がっている。
尾鷲の市街地も見える。
港も見える。
朝に食べた丼のあの食堂も、あの辺りだろうか。
海と山がこんなに近い場所は、なかなかない。
下山後、足がガクガクした。
全身で登った気がした。
それが気持ちよかった。
九鬼集落|道が細すぎて、車で入れない
九鬼へは、尾鷲駅からJRで2駅だ。
乗車時間は10分もない。
でも、別の世界に来た気がした。
集落は山と海に挟まれている。
平地がほとんどない。
家々が斜面に張り付くように建っている。
道が細い。
車が入れない路地がほとんどだ。
歩くしかない。
それがよかった。
人口は200人を切っている。
高齢化が進んでいる。
それは事実だ。
でも、漁は続いている。
港に船がある。
漁協の直売所で、さんま寿司を買った。
1本500円だ。
甘い酢と塩の塩梅が絶妙だ。
立ったまま食べた。
海が目の前だ。
帰りの電車まで時間があった。
集落の防波堤に座って、ぼーっとした。
波の音だけ聞こえる。
30分があっという間に過ぎた。
もう一度来たいと思っている。