紀伊半島の先端に、ひっそりと座る街がある。 新宮は、派手じゃない。 でも、歩くたびに何かが迫ってくる。 神話の時代から続く空気が、冬の冷たさの中に漂っている。 観光地らしくない静けさが、むしろ心に刺さった。
新宮のおすすめスポット
熊野速玉大社|朱色が、冬の空に痛いほど映えた
鳥居をくぐった瞬間、空気が変わった。
気のせいじゃない。
境内に入ると、朱塗りの社殿がずらりと並ぶ。
冬の青空との対比が、息をのむほど鮮やかだ。
創建は神話時代にまでさかのぼるという。
世界遺産に登録されてから観光客は増えたらしいが、冬の平日は静かだ。
ほぼ独り占め状態で、本殿の前に立てた。
神社の格というものをここで初めて実感した気がする。
スケールが違う。
境内の梛(なぎ)の巨木も圧倒的で、幹を見上げたまましばらく動けない。
参拝料は無料。
ただ、駐車場から境内まで少し歩くので、底の厚い靴が正解だ。
朝8時には開いているので、朝一番に来るのが断然いい。
人が少なく、光の角度も美しかった。
神倉神社|538段、登り切った先に神様がいた
正直、なめている。
「ちょっと急な石段」くらいに思って、スニーカーで向かった。
それが大間違いだ。
538段の急斜面。
手を使わないと登れない場所が何箇所もある。
岩がゴツゴツしていて、冬は特に滑る。
途中で引き返そうかとも思った。
それでも登り切ったとき、景色が広がった。
眼下に新宮の街と熊野川。
その向こうに山が重なる。
頂上には巨大なゴトビキ岩が鎮座していて、それが御神体だという。
近づくと、岩の迫力に身体が引いた。
何千年も、ここにあり続けた岩。
人間のサイズ感がどうでもよくなる瞬間だ。
登山時間は片道15〜20分ほど。
でも油断は禁物。
軍手を持っていくのを強くすすめる。
入場は無料だが、体力と覚悟は必要だ。
徐福公園|2200年前の伝説が、小さな公園にあった
熊野速玉大社から歩いて5分ほど。
住宅街の中に、突然その公園は現れる。
徐福という人物を知っているか。
秦の始皇帝の命を受け、不老不死の薬を求めて日本に渡来したとされる人物だ。
その徐福が新宮に上陸し、この地で生涯を終えたという伝説が残っている。
公園内には徐福の墓とされる石碑がある。
小さな墓石を見ながら、紀元前のことを想像した。
はるか中国から船でここまで来た人間の話が、2200年以上たった今も語り継がれている。
その事実がじわじわと面白い。
公園自体はこぢんまりしていて、観光地っぽくない。
ベンチが数脚あって、地元のお年寄りが座っている。
そこがよかった。
徐福の銅像は想像より立派で、思わず写真を撮った。
入場無料、所要時間は15〜20分ほど。
隣接する公設市場も覗いてみると面白い。