夏、多治見の気温は40度を超えることがある。 「日本一暑い街」と聞いて、逆に行きたくなった。 焼き物の街で、タイルの街で、禅の庭がある街。 暑さの中を歩いて、土の匂いと歴史に触れてきた。 名古屋から電車で30分。そんなに近くに、こんな街があったのか。
多治見のおすすめスポット
本町オリベストリート|400年前の商人街が、今もちゃんと生きている
本町通りを歩いた瞬間、時代がずれた感覚になる。
江戸から昭和の建物が、普通に並んでいる。
リノベされた古民家の中に、カフェがある。
ギャラリーがある。
焼き物を売る小さな店がある。
ここは美濃焼の産地として栄えた商人街だ。
「織部」の名を冠した通りの名前は、茶人・古田織部に由来する。
そのくらいこの土地と焼き物の縁は深い。
ランチに入った「cafe旅人の木」は、古い蔵を改装した空間。
モーニングが11時まで続いていて、地元の人が普通に使っている。
トーストと珈琲で750円。
観光地価格ではない、この感じが好きだ。
通り沿いの器の店で、豆皿を2枚買った。
1枚600円。
使うたびに多治見を思い出す、そういう買い物ができる場所だ。
多治見市モザイクタイルミュージアム|建物に入る前から、もう始まっている
外観を見た瞬間、声が出た。
タイルの破片がびっしり貼られた、土の塊みたいな建物。
藤森照信が設計したこの建築、正直ちょっとこわい。
でも中に入ったら、完全にやられた。
笠原地区はかつてモザイクタイルの国内シェア70%を誇った産地。
今も職人が働いている。
そのタイルが、壁に、床に、展示ケースの中に、これでもかと並んでいた。
昭和の銭湯のタイル。
台所のタイル。
便器を包んでいたタイル。
庶民の暮らしのすぐそこにあったものが、こんなに美しかったとは知らない。
入館料は大人100円。
信じられない金額だ。
2時間いても足りない。
ミュージアムショップで売っているタイル柄のポストカードは1枚110円。
重くならないし、絶対に買って帰ってほしい土産の一つだ。
虎渓山永保寺|静かすぎて、時間の感覚がなくなる庭だ
正直、最初は「お寺か」くらいの気持ちだ。
歩いて向かって、山門をくぐって、池の前に出た瞬間に気持ちが変わった。
水面に、橋が映っている。
木々が映っている。
空が映っている。
国宝の観音堂と開山堂、重要文化財に指定されているのは知っていたけれど、そんな肩書きはどうでもよかった。
ただ、その池のそばにずっといたかった。
鎌倉時代末期に夢窓疎石が築いた庭。
700年間、ここは変わらずここにあった。
観光地化されていない。
カフェも売店もない。
静かに、ただそこにある。
拝観料は無料だ。
無料でいいのかと思うくらいの空間だ。
朝9時頃に行ったら、ほぼ誰もいない。
紅葉の時期は混むと聞いた。
混む前の11月初旬か、緑が深い初夏に来たい場所だ。