フェリーを降りた瞬間、風が変わった。 本州とも、北海道本土とも違う、塩と草の混ざった匂い。 天売島は、来ようと決めてから、ここに立つまでが長い。 だからこそ、着いたときの静けさが、妙に胸に刺さる。 世界有数の海鳥繁殖地。その言葉が、ここでは単なる説明じゃなくなる。
天売島のおすすめスポット
赤岩展望台|100メートルの断崖の上で、言葉を失った
島の北西端に立つ、赤茶けた岩の塊。
展望台、という名前がついているが、整備されたそれとは全然違う。
柵はあるが、その先は垂直に100メートル落ちている。
足元が少し崩れている。
恐る恐る端に近づいたら、眼下に日本海が広がった。
水の青さが、見たことのない濃さだ。
晴れていても霧が出る日がある。
この日はちょうど霧の切れ間で、利尻富士のシルエットが遠くに見える。
思わず声が出た。
港から歩いて約40分。
道は舗装されているが、後半はきつめの坂が続く。
運動靴は必須。サンダルで来ていた人が引き返している。
日没前後に来ると、空が赤く燃えて、それが岩肌に反射する。
その景色のために、2日目の夕方も足を運んだ。
ウトウの巣穴群|夜8時、島が突然うるさくなる
日中の天売島は、拍子抜けするくらい静かだ。
海鳥の島、と聞いてきたのに、昼間はほとんど鳥の気配がない。
宿の人に「夜8時ごろ、西海岸に行ってみて」と言われた。
半信半疑で向かった。
まず、音が来た。
空が、鳴き声で埋まっている。
そしてシルエットが、暗い空に無数に浮かんだ。
ウトウが帰ってくる時間だ。
100万羽が繁殖するといわれる。
その数字は知っていたが、体で受け取るのは別の話だ。
足元にも巣穴がある。
うっかり踏みそうになって、ガイドの方に止められた。
観察ツアーへの参加が強くすすめられる。
羽幌沿海フェリー主催で、1人2,000円前後。
素人だけで行くと、鳥を驚かせてしまうらしい。
懐中電灯を持参する場合も、赤いフィルムを貼ることが求められる。
そういう細かいルールが、この島の誠実さだ。
オロロン鳥繁殖地|「絶滅寸前」の鳥が、ここにだけいる
正式名称はウミガラス。
「オロロン」という鳴き声から、この呼び名がついた。
一時期、日本では絶滅寸前まで追い込まれた鳥だ。
天売島の西の崖、その一角だけに残っている。
双眼鏡を持って、崖の上の観察ポイントに立った。
ガイドの方が「あそこにいます」と指差した方を見た。
岩の隙間に、白黒の体が見える。
数羽だ。それだけだ。
その「それだけ」に、しばらく動けない。
個体数が増えているとはいえ、まだ数十羽規模。
世界的にも希少な繁殖地が、こんな小さな島にある。
観察は望遠鏡越しが基本。
近づきすぎない距離感が決まっている。
そのルールを守ることで、ここはまだ繁殖地であり続けている。
6月から7月が繁殖のピーク。
その時期に合わせて来るなら、早めに宿を押さえること。
島内の宿は少なく、夏は埋まるのが早い。
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天売島への行き方
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