奈良の最南端、十津川村。 たどり着くまでに3時間かかる。 それでも行きたくなるのは、 ここにしかない静けさがあるからだ。 吊り橋の風、温泉の湯煙、 山の中に突然現れる神域。 冬の十津川は、 とにかく本気だ。
十津川のおすすめスポット
谷瀬の吊り橋|足元に川、頭の上に空だけ
長さ297m、高さ54m。
数字で聞いても実感がない。
橋の入口に立って、初めてわかった。
端が見えない。
ほんとうに、向こう岸が霞んでいる。
踏み出した瞬間、橋が揺れた。
足元の板と板の隙間から、
遠い川面が見える。
冬の朝、ほぼ貸し切り状態だ。
観光シーズンは一方通行になるが、
この日は誰もいない。
風だけが吹いている。
真ん中まで来ると、揺れが大きくなる。
引き返したくなる気持ちと、
もっと先を見たい気持ちが同時にくる。
渡り切ったとき、小さく声が出た。
対岸から見る橋の全景が、また美しい。
川の色は深い青緑。
冬でも、水は澄んでいた。
十津川温泉|硫黄のにおいと、静かな夜
源泉かけ流し、100%天然温泉。
このフレーズを何度も見てきたが、
ここは本物だ。
湯船に入った瞬間、肌がつるっとした。
重曹泉特有のぬめり。
無色透明なのに、確かに効いている感じがする。
宿は国道168号沿いに数軒ある。
川を眺めながら入れる露天風呂が、
どこもだいたいある。
冬の夜、外気温は3度だ。
湯の温度は42度。
その温度差が、最高だ。
日帰り入浴も受け付けている宿が多い。
料金は500〜700円程度。
十津川温泉には村営の共同浴場もある。
「庵の湯」は300円で入れる。
地元のおじさんたちと同じ湯に浸かる。
そういう時間が、旅には必要だ。
夜8時過ぎ、温泉街に人は誰もいない。
川の音だけが聞こえている。
玉置神社|標高1000m、霧の中の神域
正直に言う。
たどり着けるか不安だ。
駐車場からさらに20分歩く。
冬は路面が凍る。
霧が出ていると、視界が10mない。
その日も霧だ。
杉の木が霧の中から現れた。
樹齢3000年という御神木は、
幹が太すぎて、腕で囲えない。
空気が違う。
それしか言いようがない。
境内に入ると音が変わった。
山の中なのに、静かすぎる。
さっきまでの風が、ここではやんでいた。
玉置神社は「呼ばれた人しか行けない」と言われている。
最初は笑い話だ。
行ってみて、少し信じた。
参拝後、霧がすっと晴れた。
山並みが見える。
偶然だとはわかっている。
でも、こういう体験が積み重なって、
旅は記憶に残っていく。
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