紅葉の季節、愛知県豊田市は別の顔を見せる。 山あいの古い町並み、歴史の重なる山城、そして世界に誇る自動車メーカーの未来。 バラバラに見えて、全部つながっている。 「ものづくり」と「自然」と「人の暮らし」が、この街には静かに共存している。
豊田のおすすめスポット
香嵐渓(足助)|1,000本の赤が、川沿いを燃やす
11月の朝8時、すでに駐車場は列をなしている。
覚悟はしていたが、それでも驚く。
巴川沿いに広がる香嵐渓は、約4,000本のモミジが植わる渓谷だ。
江戸時代の僧・三栄和尚が一本ずつ植え始めたのが起源というから、気が遠くなる。
足を踏み入れた瞬間、空気が変わった。
朝の光が赤と橙の葉を透かして、川面に揺れている。
写真を撮る手が止まらない。
待月橋を渡りながら眺める景色は、正直、絵として完成しすぎている。
ここだけで2時間以上いた。
屋台もたくさん出ていて、五平餅(1本200円前後)が並ぶ。
焼きたてを食べながら歩く。
それだけで、来た甲斐があった。
混雑を避けるなら、開園直後の7時台か夕方16時以降がねらい目だ。
ライトアップは11月中旬〜下旬、日没後に楽しめる。
足助城|山頂に立つ、小さくて本物の城
香嵐渓から歩いて15分ほど、山道を登っていく。
息が上がってきた頃、足助城の入口に着く。
正式名称は「真弓山城」。
標高301メートルの山頂に建つ、中世の山城だ。
全国的に珍しい「復元山城」として、発掘調査をもとに忠実に再現されている。
天守閣のような派手さはない。
でも、その地味さが本物に見える。
城内に入ると、眼下に足助の町が広がる。
赤く染まった山が、どこまでも続いている。
思わず声が出た。
見学は1時間もあれば十分まわれる。
入場料は大人310円。
コスパが良すぎて、逆に申し訳ない気持ちになる。
空気が澄んでいて、静かだ。
混んでいる香嵐渓とは、対照的に人が少ない穴場だ。
登る価値は十分ある。
トヨタ会館|未来のクルマが、床の上で走っている
足助エリアから車で40分、豊田市中心部へ移動する。
トヨタの本社工場に隣接する「トヨタ会館」に到着した。
入館無料。
そのひと言で、構えすぎていた気持ちがほぐれた。
館内に入ると、コンセプトカーや水素技術の展示が並ぶ。
子どもたちがシミュレーターに群がっている。
大人もちゃんと楽しめる。
特に印象的だったのが、工場ラインを想像させる展示空間だ。
「ものを作る」ということの重さが、静かに伝わってくる。
ここに来ると、豊田市という街の意味がわかる。
この会社があるから、この町がある。
そういうことを、展示ではなく雰囲気で感じた。
滞在は90分ほど。
帰り際、出口近くのショップで限定グッズを見ていたら30分以上経っている。
工場見学ツアー(要事前予約)と組み合わせると、さらに深く楽しめる。