奈良市内から車で1時間ほど。 そこに、時間の流れが違う場所がある。 山に守られた古刹、江戸時代から変わらない町並み、 そして春になると一本だけ圧倒的に咲く桜。 宇陀は派手さがない。 でも、来るたびに何かが刺さる。 そういう場所だ。
宇陀のおすすめスポット
室生寺|奥へ奥へ、石段を登るたびに空気が変わる
室生川沿いの駐車場に車を停めたのは朝9時前。
観光客がまだ少ない時間を狙った。
朱色の太鼓橋を渡ると、すぐに世界が切り替わる。
杉の巨木が両脇に並び、苔が石畳を覆っている。
湿度が高くて、肺まで緑になる感じ。
仁王門をくぐって本堂へ。
そこからさらに奥の五重塔へ続く石段が急だ。
足元を確かめながら登ると、突然現れる。
屋外に立つ五重塔としては日本最小級。
高さ16メートル。
でもその存在感は、数字じゃ説明できない。
塔の前に立ちしばらく動けない。
誰かに話しかけるのが申し訳ないような静けさだ。
さらに奥の院まで登ると、往復で1時間半はかかる。
膝に自信がない人は無理しない方がいい。
登れた人だけが見る景色が、確かにある。
大宇陀松山地区|昭和でも平成でもない、江戸の空気が残る通り
室生寺から車で20分ほど走ると、急に景色が変わった。
格子窓の町家が続く細い通り。
電線が邪魔をしているのに、それでも絵になる。
松山地区は重要伝統的建造物群保存地区に指定されている。
江戸時代の薬問屋の町並みがそのまま残っている。
平日の午前中だったせいか、人がほとんどいない。
自分の足音だけが聞こえる通りを、ゆっくり歩いた。
「森野旧薬園」は江戸時代から続く薬草園。
250種以上の薬草が斜面に植えられている。
入場料300円。
ガイドなしでも楽しめるけど、
地元のスタッフがいる時間帯に行った方が面白い話が聞ける。
通り沿いの古い建物が今もカフェや雑貨店として使われている。
リノベじゃない、使い続けてきた感じ。
それがいい。
1時間もあれば一通り見て回れる。
でも気づくと2時間経っている。
又兵衛桜|一本なのに、負けない。春に宇陀へ来た理由
又兵衛桜を初めて見たのは、4月の第1週だ。
SNSで流れてくる写真を何度か見ていて、
「本物はどうせそこまでじゃない」。
甘かった。
田んぼの向こうに、突然その桜が立っている。
しだれ桜の幹は太く、高さは約13メートル。
樹齢は300年以上とも言われる。
一本なのに、遠くから見ても圧倒される。
近づくにつれてその重さが増してくる。
花びらが風で舞って、足元に積もっている。
後ろには小高い山。
シンプルな背景が、桜をより際立たせている。
駐車場は第1から第4まであって、
開花期の週末は朝8時頃には混み始める。
7時台に着くのがベスト。
光の向きも朝の方がきれいだ。
入場協力金として200円。
払って当然だ。
それだけの桜だ。