城下町、金魚、古い商店街。 そんな組み合わせ、他の街では聞いたことがない。 大和郡山は、奈良市からわずか電車で10分。 なのに、観光客の姿はずっと少ない。 その静けさが、逆にいい。 歩けば歩くほど、この街の時間の流れ方に気づく。
大和郡山のおすすめスポット
郡山城跡|石垣に、逆さまの地蔵が埋まっている
入場無料。
それだけで、少し構えが緩んだ。
天守台への石段を上がると、眼下に街が広がる。
ここが奈良盆地のど真ん中なんだと、初めてわかった。
注目したのは石垣だ。
よく見ると、地蔵や灯籠の欠片が混じっている。
かつて城を急ピッチで築くため、墓石まで転用したらしい。
その中に、逆さまに埋め込まれた地蔵がある。
「さかさ地蔵」と呼ばれている。
観光案内には書いてあっても、実物を前にすると違う。
石垣の一部に、確かに顔がある。
少し、ぞわっとした。
春は約180本の桜が咲き、お堀が花で埋まる。
その季節に来ると、城跡の印象はまるで変わるだろう。
追手門あたりから歩いて15分もあれば一周できる。
足がそれほど達者でなくても問題ない。
金魚ストリート|道の真ん中に、金魚が泳いでいた
最初、目を疑った。
道沿いの軒先に、水槽が並んでいる。
金魚屋、金魚グッズの店、金魚カフェ。
大和郡山は江戸時代から続く金魚の産地で、今も全国シェアトップクラスらしい。
でも、数字より目の前の光景が面白い。
透明な袋に入った金魚が、店先にぶら下がっている。
のれんにも、マンホールにも、金魚が描かれている。
ここまで一貫した街のテーマを見たのは初めてだ。
「金魚と鯉の博物館」は入場無料で入れる。
薄暗い展示室に、見たことのない品種が並ぶ。
出目金の目が、想像の3倍は大きかった。
金魚すくいの全国大会がここで開かれると聞いた。
毎年8月開催で、全国から腕自慢が集まるという。
その日に来たら、きっともっと面白い。
柳町商店街|シャッターの街かと思ったら、全然違った
正直、最初はそう見える。
シャッターが多い、昭和の商店街。
でも、歩き続けると変わってくる。
古い建物をそのまま使ったカフェがある。
手書きの看板の雑貨屋がある。
昼どきを過ぎても行列が途切れない定食屋がある。
話しかけてみると、移住してきた若い店主が多かった。
「家賃が安くて、建物が面白いから」と、30代の革細工作家は言った。
なるほど、そういう引力があるのか。
アーケードの天井が低くて、光の入り方がやわらかい。
午後2時ごろが一番いい時間だ。
昭和30年代から変わっていないような理髪店の前で、おじいさんが日向ぼっこをしている。
写真を撮っていいか聞いたら、「どうぞ」と笑った。
その笑顔が、この街で一番好きな場面になった。