朝、余呉駅を降りた瞬間に気づく。 音がない。 風もない。 ただ、白い湖面が広がっている。 琵琶湖の北、長浜からさらに山を越えた先にある余呉湖は、観光地という言葉が似合わない場所だ。 冬の朝、鏡のような水面に賤ヶ岳が映り込む。 その光景を見るためだけに、ここまで来る価値がある。
余呉湖のおすすめスポット
余呉湖|音のない湖で、時間が止まった
湖畔まで駅から歩いて5分もかからない。
それなのに、着いた瞬間に別世界だ。
冬の余呉湖は「鏡湖」と呼ばれるらしい。
実際に見るまでその意味がわからない。
風がなければ、湖面は完全に静止する。
対岸の山が、水の上にそのまま浮かんでいる。
どちらが本物かわからなくなる。
気温はマイナスになることもある。
1月の朝8時、吐く息が白かった。
湖岸には薄氷が張っていて、踏むとパキッと割れた。
白鳥が来ることでも知られていて、この日も十数羽いた。
観光客はゼロ。
白鳥と、静かな湖と、自分だけ。
こんな場所が無料で、しかも駅から5分のところにある。
それが信じられない。
夕方に再び訪れると、湖面がオレンジに染まった。
朝とはまた違う顔を持っている。
1日2回来る価値が、ここにはある。
賤ヶ岳|山頂まで登ったら、滋賀が全部見える
余呉湖だけで満足しかけたが、賤ヶ岳にも登った。
結果、登って正解だ。
リフトが冬季は運休していることを知らない。
2月上旬、往復徒歩で挑むことになった。
登山口から山頂まで約40分。
そこまで険しくはないが、雪が残っている。
軽アイゼンを持っていったのは正しい判断だ。
山頂に着いたとき、声が出た。
余呉湖が眼下に広がる。
琵琶湖も見える。
伊吹山も、霞の向こうに見える。
賤ヶ岳は1583年の古戦場でもある。
羽柴秀吉と柴田勝家が戦った場所だ。
石碑が立っていて、風が吹いていて、誰もいない。
歴史の重さと、絶景と、静けさが全部重なる。
登山というより、タイムスリップに近い感覚だ。
下りは30分ほど。
足元の雪を踏みながら降りた。
湖が、ずっと視界に入ってくる。
余呉駅|小さな無人駅に、旅の始まりがある
JR余呉駅は無人駅だ。
ホームに降り立つと、静寂が迎えてくれる。
駅舎は古くて小さい。
ベンチがあって、地図が貼ってあって、それだけ。
でも、なぜか気に入った。
電車は1時間に1本あるかないか。
大阪から新快速で長浜まで行き、そこからJR湖北線に乗り換える。
余呉駅まで合計で約1時間45分。
案外、アクセスは悪くない。
帰りの電車を待つあいだ、ホームから湖が見える。
正確には、山の向こうに湖があると知っているから、そちらを見ている。
夕方4時の電車に乗った。
車窓から余呉の山が遠ざかった。
次は泊まりで来よう。
旅の余韻を引きずるような場所というのがある。
この駅と、この湖は、そういう場所だ。
帰ってきてからも、あの静けさを思い出している。
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余呉湖への行き方
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