島根の海沿いに、時間が止まったような町がある。 温泉津(ゆのつ)。 読めない人が多い、知らない人も多い。 でも一度来たら、忘れられない。 石畳の路地、湯気、古い木造の宿。 冬の日本海の風が頬を刺す中、 ここにしかない温度があった。
温泉津のおすすめスポット
薬師湯|100円で入れる、本物の湯がここにある
入口で料金を払う。
大人460円。
銭湯より少し高いくらい。
脱衣所は狭い。
ロッカーじゃなくて、籠に入れるやつ。
昭和の銭湯の匂いがした。
そして湯船に足を入れた瞬間、わかった。
これは本物だ、と。
41℃前後の湯は茶褐色で、少しぬるっとしている。
源泉かけ流し。
加水なし、加温なし。
そのままの温泉がドバドバ注がれている。
長湯できないくらいの泉質の濃さがある。
15分も入ると、全身がじんじんしてきた。
建物は明治43年築。
国の登録有形文化財だ。
でも「文化財」という空気は全然なくて、
地元のおじさんたちが普通に肩を並べて入っている。
それがよかった。
生きている湯だ。
温泉津温泉街|路地を曲がるたびに、江戸時代が顔を出す
温泉津の温泉街は、本当に小さい。
端から端まで歩いて10分かからない。
でも10分で終わらない。
路地が多い。
坂が多い。
そして、曲がるたびに何かある。
石畳の細い道。
傾いた軒先。
格子窓の向こうに明かり。
銀山街道の荷揚げ港として栄えた町だ。
江戸時代、石見銀山で掘り出された銀が
ここから船に積まれて運ばれた。
その頃の建物が、今も普通に残っている。
昼間より夜がよかった。
人通りが減って、静かになる。
湯気がほんのり見える。
木造の宿から三味線の音がした、
そんなことはなかったけど、
そういう音が聞こえてきそうな夜だ。
冬の夜は寒い。
体感で3℃くらい。
海が近いから風が湿っていて、骨まで冷える。
だから湯がありがたい。
町と温泉が、ちゃんとセットになっている。
石見焼|でかくて、重くて、頼れる焼き物
温泉津の近くに、石見焼の窯元がある。
正直、焼き物にそこまで興味はない。
でも実物を見て、考えが変わった。
とにかくでかい。
甕(かめ)が専門で、
高さ1メートルを超えるものもある。
江戸時代から味噌や醤油を漬ける甕として
全国に出荷されている。
丈夫で、重くて、長持ちする。
そういう焼き物だ。
観光地にあるような繊細な器とは全然違う。
土の塊から生まれた、働く焼き物。
窯元に入ると、陶芸体験もできる。
体験料は1,500円前後(場所による)。
小ぶりの器を自分で作れる。
でも甕を作る職人の手元を見ているだけで
十分に満足した。
購入した小さな湯呑みは、
家でいまも毎朝使っている。
使うたびに温泉津を思い出す。
それでいい土産だ。
モデルコース
温泉津への行き方
HUB CITY
松江(拠点都市)から行ける旅先を見る →