日本海に面した小さな町、深浦。 新幹線の駅もなく、アクセスはお世辞にも良くない。 それでも行きたくなるのは、ここにしかない景色があるから。 荒々しい海と、むき出しの岩と、湯気。 「遠い」という感覚が、着いた瞬間に「来てよかった」に変わる場所だ。
深浦のおすすめスポット
不老不死温泉(海辺の露天風呂)|波しぶきが、顔にかかった
岩の上に、小さな湯船がぽつんとある。
それだけだ。
屋根もなく、仕切りもなく、目の前は日本海。
干潮のタイミングを狙って入ると、岩礁まで5メートルもない。
波が来るたびに、塩の飛沫が顔にかかる。
お湯は鉄分で赤茶けた色をしていて、肌にじわじわと染み込んでくる感じがした。
混浴の露天は、朝9時の開場と同時に入るのがベスト。
10時を過ぎると人が増えてくる。
夕日の時間帯も人気だが、混雑覚悟が必要だ。
「温泉に入りながら海を見る」とよく聞くが、ここは違う。
海の中に、放り込まれた感覚に近い。
湯船の縁に頭を乗せて、ただ波音を聞いた。
何も考えない。
それが贅沢だと、あとになって気づいた。
黄金崎不老不死温泉|泊まって、朝の海を独り占めにした
海辺の露天風呂と同じ源泉を持つ宿泊施設。
ここに泊まると、世界が変わる。
夕方、チェックイン後すぐに露天へ向かった。
日が沈む方向に湯船が向いていて、空がオレンジに染まっていく様子をお湯の中から眺める。
これをやりたくて、深浦まで来たと言っても過言ではない。
翌朝6時に起きて、また露天に向かった。
他に誰もいない。
波の音だけが聞こえて、湯気が風に流れている。
15分くらい、ぼーっとした。
夕食は地魚の刺身と、イカの塩辛が出てきた。
深浦のイカは、甘みが強くて驚いた。
1泊2食付きで1万5千円前後からある。
このロケーションと温泉の質を考えると、安いとすら感じた。
白神山地(近隣)|人の手が入っていない、ということの重さ
深浦から車で30〜40分。
白神山地の入口、暗門の滝エリアへ向かった。
世界自然遺産に登録されたのは1993年。
日本最大級のブナの原生林が、手つかずのまま残っている。
遊歩道を歩き始めると、空気が変わった。
ヒノキでも杉でもない。
ブナの葉が透過する光の色は、やわらかくて少し緑がかっている。
第三の滝まで往復で約1時間半。
足元は整備されているが、沢沿いの道なので水量によっては靴が濡れる。
サンダルで来ていた観光客が途中で引き返している。
トレッキングシューズは必須だ。
ガイドブックには「大自然」と書いてある。
でも実際に立つと、そんな言葉では足りない。
人間の手が届かなかった場所が、まだここにある。
そのことが、静かに、ずしっと来た。