日本海側の港町・酒田には、静かな誇りがある。 かつて北前船の交易で栄えた街は、 派手さより深みを選んできた場所だ。 山居倉庫のケヤキ並木、土門拳が残したまなざし、 海風が吹き抜ける日和山公園。 歩けば歩くほど、この街の層が見えてくる。
酒田のおすすめスポット
山居倉庫|米どころ庄内の、静かな威圧感
倉庫、と聞いて期待値を下げている。
その認識は、ケヤキ並木を抜けた瞬間に崩れた。
明治26年築。
9棟が連なる米保管倉庫は、
今も現役で使われている。
壁の黒い板張り、屋根の二重構造。
これ全部、温度管理のための設計だと知って、
130年前の技術に少し黙った。
夏に来るなら午前中がいい。
ケヤキが倉庫の壁に影を落とす時間帯、
カメラを持ちながら動けなくなる。
隣接する「酒田市観光物産館 夢の倶治」では
庄内米のおにぎりを売っている。
300円ちょっとで、ここまでうまいのか。
そういう発見が、この街には多い。
入場は無料エリアと有料エリアが混在する。
資料館部分は大人210円。
倉庫の外観を見るだけなら無料で歩ける。
土門拳記念館|写真家の怒りと、やさしさが同居する場所
酒田出身の写真家・土門拳を、
正直なめている。
記念館に入って、最初の展示室で足が止まった。
「筑豊のこどもたち」シリーズ。
1950年代、炭鉱の子どもたちを撮ったモノクロ写真。
一枚一枚が、重い。
怒りなのか悲しみなのか、
シャッターの向こうにある感情が、
ガラス越しにこちらへ飛んでくる。
建物は谷口吉生の設計で、
池に浮かぶように建っている。
建築だけでも見に来る価値がある。
常設展示は撮影禁止。
それでいい。
ここはスマホを下ろして、ただ見る場所だ。
所要時間は1時間では足りない。
じっくり見るなら1時間半は確保したい。
入館料は大人730円。
月曜休館なので注意。
日和山公園|船乗りたちが、ここから空を読んでいた
高台に上がると、酒田の輪郭が見えてくる。
日和山公園は、かつて船乗りたちが
天気を読むために集まった場所だ。
「日和を見る」という言葉の語源がここにある。
日本最古級の木製六角灯台が残っていて、
それが思いのほか小さくて驚いた。
こんな小さな灯台で、海を越えていたのか。
春は桜の名所として有名だが、
秋に来たときの景色も悪くない。
鳥海山が見えた日は、それだけで来た意味があった。
公園内には千石船の実物大模型もある。
「北前船」の規模を初めて体感できる。
入場無料。
混雑もなく、地元の人が犬を散歩させている。
そういう普通の空気が、かえって心地よかった。
酒田の街歩きの起点としておすすめ。
市街地まで歩いて10分ほど。
象潟|松尾芭蕉が惚れた、水没した島々の残像
酒田から車で約40分、秋田県にかほ市へ入る。
ここに象潟(きさかた)がある。
「おくのほそ道」で芭蕉が
松島と並べて称えた景勝地。
ただし今の象潟は、江戸時代の地震で
海底が隆起して陸地になってしまった。
かつて海だった場所に、田んぼが広がっている。
その中に、小さな丘が点々と残っている。
これが昔、島だった場所だ。
奇妙な景色だ。
島が田んぼに埋まっているような、
そんな表現が近い。
蚶満寺(かんまんじ)の境内から見る眺めが特にいい。
芭蕉の句碑もある。
「象潟や雨に西施がねぶの花」
現地で読むと、少し沁みた。
道の駅「象潟」の4階展望台からも全体が見渡せる。
無料で上がれるので、まずここで全体像をつかむといい。
酒田と合わせて、1泊2日のルートが組みやすい。
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酒田への行き方
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