雪の中に、湯気だけが立ちのぼっている。 そこに人がいる。 それだけで、なぜかほっとした。 乳頭温泉は、秋田の山の奥にある。 アクセスは正直めんどくさい。 でもそのめんどくささが、着いたときの感動になる。 冬に来てよかったと、心から思った場所だ。
乳頭温泉のおすすめスポット
鶴の湯|白濁の湯に、江戸時代が残っている
乳頭温泉の中で、一番有名な宿。
予約は数ヶ月待ちになることもある。
それでも来る価値が、確かにあった。
茅葺き屋根の建物が、雪の中に並んでいる。
電灯の光が少ない。
だから夜は本当に暗い。
静かすぎて、耳が痛いくらいだ。
露天風呂の湯は白濁している。
温度は熱めで、42〜43℃くらい。
外気温がマイナスになる冬は、湯気が視界を覆う。
顔だけが冷たくて、体は芯まで温まる。
あの感覚は、他の温泉では体験したことがない。
日帰り入浴は10:00〜15:00まで。
料金は600円。
駐車場から宿までの送迎バスがある(冬季は必須)。
朝食に出てきた山の芋鍋が、予想外においしかった。
素朴なのに、ちゃんと記憶に残る味だ。
黒湯温泉|道の終わりに、本物があった
鶴の湯から車で10分ほど山を上る。
道幅が狭くなって、不安になったころに着く。
そこが黒湯温泉だ。
名前の通り、湯は黒っぽい褐色をしている。
成分が濃い。
入った瞬間に、肌にまとわりつく感じがした。
内湯と露天風呂が別々の小屋に分かれている。
その構造が、なんだか好きだ。
スリッパを履いて、雪の上を歩いて移動する。
寒いけど、それも含めて楽しかった。
冬季は積雪によって休業する期間がある。
行く前に必ず電話で確認したほうがいい。
実際に閉まっていて引き返したという話を、宿で聞いた。
観光客が少なく、静かに湯に浸かれる。
鶴の湯が混んでいるなら、黒湯に来るといい。
穴場、というより本物の山の湯だ。
妙乃湯|女性ひとりでも、ちゃんと居場所があった
乳頭温泉郷の中で、もっとも洗練された宿。
川沿いに建っていて、部屋の窓から水の音が聞こえる。
金の湯と銀の湯、2種類の源泉がある。
金の湯は赤みがかっていて、鉄分の匂いがする。
銀の湯は透明で、肌がすべすべになる感じがした。
どちらも個性がちゃんとある。
日帰り入浴でも、タオルや浴衣が借りられる。
脱衣所がきれいで、アメニティも揃っている。
温泉宿の日帰り入浴で、これだけ整っているのは珍しかった。
女性ひとり旅で来ている人が多かった。
なんとなく理由がわかる気がした。
宿のスタッフが、距離感がちょうどよかった。
夕食は囲炉裏を囲む形式で、地の食材が並ぶ。
比内地鶏の料理が、特においしかった。
泊まれるなら、ここを選ぶのもひとつの答えだ。
田沢湖|冬の湖は、静かすぎて怖かった
乳頭温泉から車で約30分。
田沢湖は、日本一深い湖だ。
水深は423メートルある。
冬に来ると、湖の色が違う。
夏は青々としているらしいが、冬は暗い紺色だ。
湖面がほとんど凪いでいて、音がない。
「たつこ像」は湖畔に立っている。
金色の像が、冷たい空気の中に浮いているように見える。
なぜか近づきたくなくて、しばらく遠くから見ている。
湖一周は約20km。
冬は路面が凍結するので、車でゆっくり走るのがいい。
スタッドレスタイヤは必須だ。
温泉で温まった後に、この湖を見に来るのがいい順番だ。
温泉の熱が体に残っているまま、冷たい景色を見る。
そのコントラストが、乳頭温泉の旅の締めになった。
売店は冬季営業していないところが多いので、食事は事前に済ませておくといい。
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乳頭温泉への行き方
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