八ッ場ダムの底に沈んだ温泉地、と聞いて足が向いた。 移転して新しくなった川原湯温泉は、どこか静かな諦めと、それでも続く生活の匂いがする。 冬の空気は澄んでいて、硫黄の香りが鼻をついた。 ここには「賑わい」じゃなく「しみじみ」を求めて来るべき場所だ。
川原湯温泉のおすすめスポット
王湯|移転してもここにある、350年の湯
川原湯温泉の共同浴場、王湯。
入浴料は500円。
フロントで料金を払って、小さな暖簾をくぐる。
脱衣所はこぢんまりしている。
4〜5人入ればいっぱいになるような浴槽。
お湯はやや白濁した硫黄泉で、少しぬるめの42度前後。
肌にじわっとなじむ感覚がある。
「旧地に湯が出たのは江戸時代から」という話を、受付のおばちゃんに聞いた。
ダム建設で土地ごと移転したのに、この湯は引き継がれた。
そう思うと、なんとも言えない気持ちになる。
冬の平日の昼間、ほぼ貸切だ。
湯船に浸かりながら、外の冷たい風の音だけが聞こえる。
こういう時間が、旅に来た本当の理由だったりする。
営業は8:00〜20:00。
火曜定休なので注意。
川原湯温泉駅周辺|新しい街が、まだ息をつき始めたばかり
2014年に移転した新しい川原湯温泉は、街ごと山の斜面に引っ越した。
川原湯温泉駅も新しい。
ホームから見える八ッ場ダムの湖面が、妙に青かった。
駅前を少し歩いてみる。
旅館や土産物屋が数軒、道沿いに並んでいる。
でも人の気配は少ない。
昼間でも静かすぎるくらい静かだ。
「まだ根付いてる途中なんだな」。
移転から10年。
新しい建物と、冬枯れた山の景色がまだ噛み合っていない感じがある。
それがリアルで、かえって目が離せない。
30分も歩けば一周できるくらいの小さな温泉地。
急ぐ必要はない。
ゆっくり歩いて、ダムを眺めて、湯に入るだけでいい。
八ッ場ダムの展望台まで車で5分ほど。
湖の色が天気によって全然違うので、午前中に見ておくのがいい。
八ッ場ダム展望台|沈んだものを、水が静かに覆っている
川原湯温泉から車で5分ほど。
八ッ場ダムの展望台に立った。
冬の昼過ぎ、風が強かった。
眼下に広がるエメラルドグリーンの湖面。
水量によって色が変わるらしく、この日は少し緑がかっている。
ダムが完成したのは2019年。
工事が始まってから60年以上かかったと聞いた。
その間に、温泉地があって、人が暮らしている。
今はそこに水がある。
感傷的な話をするつもりはなかったが、しばらく動けない。
ただの観光ダムじゃない、という感じがした。
展望台は無料。
駐車場も無料で10台ほど止められる。
ダムの堤体は歩いて渡れる。
高さは116m。
橋の上に立つと、足がすくむ人もいる。
夕方に来ると光の加減で湖面の色が変わる。
時間があれば夕刻前に再び訪れたい。
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川原湯温泉への行き方
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