水戸から車で30分ほど走ると、急に空気が変わる。 山に入って、静かになって、時代がひとつ遡る感じがした。 西山荘は、水戸藩主・徳川光圀が晩年を過ごした隠居所だ。 「水戸黄門」の舞台として知られるけれど、実際に来ると、そんな予備知識が吹き飛んだ。 ここは、ただ、静かだ。
西山荘のおすすめスポット
西山荘 茅葺き御殿|300年前の午後に、迷い込んだ
入場料は300円。
安い、と思ったけれど、門をくぐった瞬間に納得した。
ここはお金で測るような場所じゃない。
茅葺き屋根の建物が、木立の中にひっそり建っている。
光圀がここに移ったのは1690年。
それから300年以上が経っても、建物はそのままの姿だ。
縁側に立つと、目の前に池がある。
風が吹くと水面が揺れて、木の葉が落ちてきた。
10月の午後2時ごろ、観光客はほとんどいない。
光圀はここで「大日本史」の編纂を続けた。
天下を歩き回っていた印象があるけれど、実際はここで書き続けていたらしい。
その静けさが、今もそのまま残っている気がした。
派手さはゼロ。
でも、ずっといたくなる場所だ。
西山荘 周辺の杉並木|歩くだけで、整っていく
敷地に入る前に、参道を歩く。
両側に杉の木が並んでいて、上を見ると空が細くなった。
高さは20メートル近くある。
足元はしっとりして、苔が生えている。
午前中に来ると、木漏れ日が差し込んでくる。
歩いて5分もかからないくらいの距離なのに、なぜか長く感じた。
悪い意味じゃなくて、時間がゆっくり流れる感覚。
平日の午前10時ごろに訪れたとき、すれ違ったのは2人だけだ。
カメラを持った年配の男性と、散歩中らしい地元の女性。
誰も急いでいない。
観光地にありがちな「映えスポット」感がない。
ただの杉並木なのに、なぜかここが一番印象に残っている。
何かを考えながら歩くのにちょうどいい道だ。
常陸太田の里山風景|帰り道で、もう一度振り返った
西山荘から車で10分ほど走ると、田んぼと山だけになる。
信号もほとんどない。
茨城にこんな場所があるとは思っていない。
常陸太田市は人口が減り続けている地方の小都市だ。
シャッターが目立つ商店街もあった。
でも、その分、山と川と空だけが残っている。
西山荘に向かう道中、田んぼの畦道で車を止めた。
10月の稲刈り後、切り株がずっと続いている。
遠くに里山が重なっている。
その景色を見て、光圀がここを選んだ理由が少しわかった気がした。
権力の中心から離れて、ここで静かに仕事をする。
理想の晩年だ。
帰り道、もう一度振り返ってしまった。
また来るだろう。
季節を変えて、今度は冬に。
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西山荘への行き方
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