本州最北端に近い、津軽海峡沿いの小さな漁師町。 下風呂温泉は、派手さがまるでない。 でも、それがいい。 冬の風が海から吹きつける夜、 白い湯気のなかに体を沈めると、 ここまで来てよかったと、じんわり思う。 旅慣れた人ほど、ここに戻ってくる理由がわかる気がした。
下風呂温泉のおすすめスポット
下風呂温泉共同浴場「大湯」|60円で入れる、本物の湯があった
料金は60円。
番台のおばちゃんに小銭を渡して、のれんをくぐる。
脱衣所は木張りで、ロッカーじゃなくてかごが並んでいる。
昭和のまま、時間が止まっている感じ。
湯船は一つ。
熱い。本当に熱い。
地元のおじいさんたちは平然と肩まで浸かっている。
こちらはそっと足から入って、なんとか腰まで。
泉質は含硫黄・ナトリウム-塩化物泉。
硫黄のにおいが浴室に充満している。
このにおいがたまらなく好きだ。
湯から上がって外に出ると、海風が顔に当たる。
体の芯は熱いのに、頬だけ冷たい。
その感覚が妙に気持ちよくて、しばらく路地に立っている。
観光客向けに整備された温泉とは、全然違う。
ここは本当に地元の人の風呂だ。
津軽海峡の浜辺|冬の海は、静かに怖い
温泉街から歩いて3分。
もう海が見える。
冬の津軽海峡は、どんよりとした鉛色をしている。
波が思ったより荒い。
砂浜じゃなくて、丸い石が敷き詰められた浜辺で、
波が引くたびにじゃらじゃらと音がする。
人が誰もいない。
風が強くて、10分も立っていると指先が痛くなってくる。
でも、なぜか離れられない。
対岸は北海道。
そう思うと、妙な感慨がある。
日本の端っこに来たんだという実感が、海を見ると湧いてくる。
夕方4時過ぎ、水平線が橙色に染まり始めた。
曇っていたのに、沈む寸前だけ太陽が顔を出した。
カメラを向ける暇もなく、2分ほどで消えた。
その2分のために、ここまで来ただ。
食堂みさき|漁師町の定食は、あたりまえに旨い
温泉街に食堂は多くない。
その中で、地元の人に聞いて入ったのが「みさき」だ。
カウンター6席と小上がりだけの小さな店。
壁に手書きのメニューが貼ってある。
マグロの刺身定食が1,200円。
迷わず頼んだ。
出てきた刺身が、厚い。
津軽海峡のマグロは有名だと知ってはいたが、
実際に口に入れると、脂ののり方が全然違う。
ごはんが止まらなくて、気づいたら完食している。
おかみさんに「観光で来たの?」と聞かれた。
「温泉に入りたくて」と答えたら、
「それだけのために来てくれたの」と笑っている。
その「それだけのために」が、旅の本質な気がする。
目的地は一つでいい。
下風呂温泉は、それで十分成立する場所だ。
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下風呂温泉への行き方
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