黒石市街からバスで30分ほど山を登る。 だんだん雪が深くなる。 窓の外に民家が減っていく。 そして急に、湯けむりが見える。 板留温泉は、そういう場所だ。 観光地っぽい派手さはない。 でも、着いた瞬間に「ここで泊まりたい」。
板留温泉のおすすめスポット
板留温泉街|雪の中に、湯けむりだけが揺れている
温泉街と呼ぶには小さすぎる。
旅館が数軒、川沿いに並んでいるだけだ。
でも、それがいい。
冬に来ると、あたりは完全に雪に埋まっている。
道の両端に積み上がった雪の高さが、1メートルを超えている。
足音が消える。
車の音もない。
聞こえるのは、温川(ぬるかわ)の水音だけ。
宿のフロントで聞いたら、
「ここの源泉は50度くらい。昔からずっと同じ湯が出てる」と言っている。
歴史は400年以上あるらしい。
そんな気配が、たしかに漂っている。
夕方4時を過ぎると街灯が灯り始める。
雪面がオレンジ色に染まる。
そのタイミングを狙って外に出ると、
思わず写真を撮りまくってしまった。
大きな観光地では絶対に味わえない、
「自分だけがここにいる」感覚がある。
温川沿いの露天風呂|外が寒いほど、湯が気持ちいい
宿の露天風呂は、川のすぐ横にある。
脱衣所から出た瞬間、マイナス5度の空気が顔に刺さった。
思わず「うわっ」と声が出た。
そのままお湯に入ると、ぜんぶ溶けた。
指先から肩まで、じんわりと温まっていく。
お湯の温度は42度前後。
熱すぎず、ぬるすぎず。
長湯できるちょうどいい加減だ。
見上げると、雪をかぶった杉の木がある。
川の音がずっと聞こえる。
空が暗くなってきたら、星が出てきた。
露天風呂に1時間いた。
追い焚きなし、シャワーなし、スマホなし。
ただ湯に浸かっているだけで、
何も考えなくなった。
「湯治」という言葉の意味が、
ここに来てやっとわかった気がした。
泉質はナトリウム-塩化物泉。
肌がすべすべになる、とよく言われるが、
本当にそうだ。
こけし工房の見学|温泉地に根付いた、手仕事の時間
板留温泉の周辺は、津軽こけしの産地だ。
黒石市内にはこけし工房がいくつかある。
温泉の翌朝、宿の人に教えてもらって一軒訪ねた。
工房に入ると、木の削れる音がした。
ろくろがゆっくり回っている。
職人さんは60代くらいで、手を動かしながら話してくれた。
「一本削るのに30分はかかる」と。
津軽こけしの特徴は、胴体の模様と大きな頭。
同じ作家でも、一本ずつ微妙に違う。
棚に並んだこけしをひとつひとつ見ていたら、
20分くらい経っている。
値段は小さいものが1,500円から。
大きくなると1万円を超える。
迷って迷って、手のひらサイズを一本買った。
温泉とこけし。
この地域の冬のセットとして、これ以上ない組み合わせだ。
宿に戻ってこけしを棚に置いたら、
なんとなく部屋が締まった気がした。
モデルコース
板留温泉への行き方
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