栃木県の平野にぽつんと浮かぶ、異様な岩の塊。 標高はたった173メートル。 でも、その頂に立った瞬間、言葉を失った。 冬の空気は刺さるように冷たくて、 関東平野がどこまでも白く霞んでいた。 ここは観光地というより、もっと静かで、もっと深い場所だ。
岩船山のおすすめスポット
岩船山|173メートルの頂に、別の時間が流れている
登り口に着いたのは朝9時ごろ。
駐車場は無料で、平日はほぼ誰もいない。
石段が急だ。
手すりを握りながら、一段一段登る。
息が白くなる。
冬の朝、気温は3度だ。
5分も登ると、景色が一変する。
巨大な岩壁が迫ってくる感じ。
浸食された岩肌はオレンジがかっていて、
どこかの国の遺跡に迷い込んだみたいだ。
頂上に出た瞬間、風が強くなった。
関東平野が360度広がっている。
筑波山が小さく見える。
冬晴れの日なら、富士山も見えるらしい。
ベンチに座って、缶コーヒーを一口飲んだ。
それだけで、十分だ。
混んでいないのがいい。
ここには、静けさがある。
岩船山 高勝寺|石仏と苔と、しんとした空気
頂上近くに、古いお寺がある。
高勝寺。
創建は奈良時代とも言われている。
境内に入ると、空気が変わる。
ひんやりして、静かで、
時間が止まっているみたいだ。
石仏が並んでいた。
苔むした台座の上に、ずらりと。
数十体はある。
表情がみんな少しずつ違う。
冬の光が差し込んで、
石の表面がうっすら輝いている。
その瞬間だけ見られるものがある。
訪れる人は少ない。
ガイドもいないし、音声案内もない。
自分のペースで、ただ歩くだけ。
それがいい。
奥の院への細い道も歩いてみた。
岩を削った参道が続く。
足元が滑るから、冬は特に注意が必要だ。
でも、その不便さも含めてここの魅力だ。
岩船山の採石場跡|廃墟なのに、なぜか美しかった
山の南側を回ると、採石場の跡が広がっている。
ここが、正直一番驚いた場所だ。
垂直に削られた岩壁。
高さは20メートル近くある。
ところどころに緑が生えていて、
水が岩肌を伝って光っている。
かつてここは、大谷石を切り出した場所だ。
石材の採掘は昭和中期に終わった。
それから何十年も、岩だけが残っている。
廃墟なのに、怖くはない。
むしろ静謐な感じ。
誰も手を加えていないのに、
妙に整然としている。
冬の午後、低い光が岩壁に当たると、
影と岩の色が混ざって、
オレンジとグレーのグラデーションになる。
写真を撮っている人を一人見かけた。
気持ちはわかった。
ここは、何度でも来たくなる顔を持っている。
モデルコース
岩船山への行き方
HUB CITY
宇都宮(拠点都市)から行ける旅先を見る →