山道を奥へ奥へと進むと、突然湯気が立ち上る。 群馬県の最奥部、標高約800mに花敷温泉はある。 冬になると雪に閉ざされ、静寂だけが残る場所。 そこに、何十年も変わらない湯舟がある。 派手さはない。でも、一度来ると忘れられない。 そういう温泉がここにある。
花敷温泉のおすすめスポット
花敷の湯|雪の中に沈む、ぬるめの硫黄泉
湯温は40℃前後。
ぬるい、と最初は思った。
でも10分、20分と浸かっていると、じわじわと体の芯が温まってくる。
硫黄の香りが鼻をつく。
ほんのり白濁した湯が、木造の浴槽に満ちている。
冬場は窓の外に雪が積もって、湯気がもうもうと上がる。
その光景を見た瞬間、思わず声が出た。
宿の露天風呂に出ると、気温はマイナスに近い。
体だけ熱くて、頰が冷たい。
その温度差が、なぜか気持ちいい。
シャンプーや石鹸は使えない源泉かけ流しの浴槽もある。
余計なものが何もない湯。
ただ浸かるだけでいい場所だ。
花敷周辺の雪道散策|誰もいない、静かすぎる冬景色
宿を出ると、足跡ひとつない雪道が続いている。
車も通らない。
人の声もしない。
聞こえるのは、雪を踏む音と、どこかから流れる沢の音だけ。
吾妻川の支流沿いに歩くと、岩の隙間から湯気が出ている場所がある。
地面の下で温泉が湧いているのが、ここでははっきりわかる。
歩いて15分ほどで川沿いの岩場に出る。
冬は凍った岩と雪のコントラストが鮮烈だ。
観光地化されていない。
看板もほとんどない。
だからこそ、自分だけが知っている場所みたいな感覚になる。
防水のブーツは必須だ。
長靴でも良かった。
歩いた距離は往復で約4km。
1時間半ほどの、静かな散歩だ。
中之条町・暮坂峠|帰り道に寄り道したい峠の眺め
花敷温泉から車で約20分。
暮坂峠に向かう道がある。
詩人・若山牧水がこの地を旅したことで知られる峠だ。
冬の午後3時を過ぎると、光が急に斜めになる。
杉林の間から差し込む夕方の光が、雪に反射してオレンジ色に染まった。
あの色は写真に収められない。
肉眼で見て、ただ立ち尽くしている。
峠には牧水の歌碑がある。
「幾山河 越えさり行かば 寂しさの はてなむ国ぞ 今日も旅ゆく」
旅の途中でこの歌を読むと、刺さり方が違う。
帰りに立ち寄る道の駅「六合」で、地元の野菜と舞茸を買った。
野菜は全部で600円ほど。
都会のスーパーで買う気にはなれない鮮度だ。
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花敷温泉への行き方
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