八甲田山の奥深く、標高約900m。 そこに、ひっそりと湯が湧いている。 谷地温泉は「日本三秘湯」のひとつと言われているが、 そんな肩書きより、ただ「遠い」という事実の方が先に来た。 着いたとき、ああ、ここまで来たんだ。 その感覚だけで、もう十分だ。
谷地温泉のおすすめスポット
谷地温泉|低温の湯に、1時間。体が溶けていく感覚
日帰り入浴は700円。
古い木造の建物に入ると、硫黄の匂いがふわっと来る。
きつくない。やさしい匂いだ。
浴槽はふたつ。
「下の湯」は38℃前後、「上の湯」は42℃ほど。
まず下の湯に入った。
ぬるい。でも出られなくなった。
10分、20分、気づいたら40分いた。
体の芯からじわじわと温まる感覚は、熱い湯とは全然違う。
これが本物の温泉の入り方なんだ。
脱衣所は昭和のまま止まっている。
ドライヤーも鍵付きロッカーもない。
それがいい。
八甲田・冬景色|雪に閉ざされた道を走って、ここに来る
冬、谷地温泉へ向かう道は雪だ。
青森市内から車で約1時間半。
八甲田ロープウェイ周辺を過ぎると、別の世界になる。
ブナ林が白く染まっている。
枝に雪が積もって、静止したまま動かない。
音がない。
車を止めて外に出た。
肺に冷たい空気が入ってきた。
それだけで、少し正気に戻った気がした。
道中に誰もいない。
すれ違う車も、ほとんどない。
谷地温泉に泊まる人、あるいは目指す人だけが走る道だ。
冬にここへ来ることを、誰かに勧めるのは少し迷う。
道の状況によっては怖い場面もある。
でも、雪の八甲田を抜けてたどり着いた温泉の価値は、
夏とは全然違う。
谷地温泉の朝|6時、誰もいない湯に入る
泊まると、朝6時から湯に入れる。
これが本当によかった。
他の宿泊客はまだ誰もいない。
浴室に自分ひとり。
お湯の音だけが聞こえる。
窓の外は雪だ。
白い木立が見える。
何も考えない。
ただそこにいた。
朝ごはんは8時から。
山菜と焼き魚と味噌汁。
シンプルで、十分だ。
谷地温泉に「観光」しに来る場所はない。
周辺に土産屋も飲食店もない。
街歩きというより、ひたすらこもる場所だ。
スマホの電波も怪しい。
でもそれが、ここに来た理由になる。
たまには、何もない場所に来た方がいい。
そう思えた2日間だ。
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谷地温泉への行き方
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