有田でも唐津でもなく、波佐見。 そこに気づいた人だけが、この町にやってくる。 長崎県の山あいに静かに息づく焼き物の里。 派手な観光地じゃない。 でも一度来たら、また来たくなる。 そういう場所が、波佐見にはある。
波佐見のおすすめスポット
西の原|廃工場が、午後の光の中で息を吹き返した
かつて製陶所だった場所が、今はカフェや雑貨店になっている。
リノベーション、という言葉では足りない気がした。
建物の骨格はそのまま。
煉瓦の壁、高い天井、古びた窓枠。
そこに、今の暮らしがそっと重なっている。
敷地内を歩くと、靴音が少し響いた。
広さは東京ドームの半分くらいか。
店と店の間に、ベンチがある。
観光客より、地元の人が多かった。
カフェで頼んだラテは680円。
波佐見焼のカップで出てきた。
当然といえば当然だけど、それがうれしかった。
午後2時頃が一番いい。
西日が煉瓦に当たって、橙色に染まる。
その時間帯にいられたのは、運がよかった。
ここで1時間、何もせずに過ごした。
それが正解だったと今でも思う。
陶芸の館|波佐見焼400年の、静かな重み
正直、最初は「資料館か」と軽く見ている。
それが間違いだったと、入って5分で気づいた。
館内には波佐見焼の歴史が年代順に並んでいる。
でも展示の主役は「モノ」じゃない。
「どうやって作られてきたか」の話だ。
江戸時代、この谷で100基以上の登り窯が動いている。
その数字に、少し頭がくらくらした。
今の中尾山一帯が、当時まるごと窯場だったという。
常設展示の観覧料は200円。
所要時間は40〜60分が目安。
でも気づいたら90分経っている。
展示の最後に、現代の波佐見焼が並んでいる。
シンプルで、値段も手頃で、毎日使えるデザイン。
「普段使いの器」として全国に広まった理由が、そこでわかった。
館に併設されたショップも見逃せない。
窯元ごとに並んだ器を、実際に手に取れる。
1枚500円台のプレートを3枚買った。
中尾山|山の斜面に、窯の記憶が刻まれている
西の原から車で5分。
急に景色が変わった。
斜面に沿って、古い登り窯がある。
全長は約160メートル。
江戸時代から続く「天神森窯跡」だ。
国の史跡に指定されているけど、柵も案内板も最小限で、ほったらかされている感じがした。
それが、かえってよかった。
窯跡の横の細い坂道を上ると、今も現役の工房が点在している。
観光地化されていない。
ドアを開ければ、ろくろを回している人がいる。
声をかけると、手を止めて少し話してくれた。
「ここで作ってここで売る、その方がわかりやすい」
そう言って、棚の器を見せてくれた。
中尾山は、山ごと焼き物の里だ。
工房の煙突、石垣、苔むした路地。
400年分の時間が、地面に染み込んでいる感じがした。
秋の午前中、ここを独り占めできる。
観光客は誰もいない。
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波佐見への行き方
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