鹿児島市内から車で30分ほど西へ走ると、 空気がすこし変わる。 観光地っぽさがなくて、生活の匂いがする。 それが日置だ。 薩摩焼の窯元が集まる集落、 地元民しか来ないような温泉、 武将の墓が草に埋もれるように立っている。 派手さはない。 でも、来てよかったと思う瞬間が、確実にある。
日置のおすすめスポット
美山(苗代川)陶芸村|400年続く窯の煙が、まだここにある
細い坂道を上がっていくと、
突然、窯元が並びはじめる。
看板もほぼない。
知らなければ通り過ぎてしまう集落だ。
美山は、1598年に朝鮮から連れてこられた陶工たちの子孫が
今も焼き物を作り続けている場所。
約400年、この地で途切れていない。
窯元を覗くと、職人がろくろを回している。
観光用じゃなく、普通に仕事中だ。
「見ていいですよ」と声をかけてくれた。
沈壽官窯は、15代続く名家。
敷地内の陳列館で作品を見ると、
薩摩焼の白の透明感に息をのむ。
1点10万円を超えるものもある。
それでも手に取って確かめさせてくれる。
小さな直売所で、湯呑みを1つ買った。
2,200円。
毎日使っている。
吹上温泉|地元のじいちゃんたちに混じって、43℃に浸かる
温泉街、という感じではない。
田んぼの中に、ぽつんと温泉がある。
駐車場に車は数台。
地元ナンバーばかりだ。
入浴料は大人330円。
ロッカーに100円を入れると、戻ってくるタイプ。
脱衣所は昭和のまま止まっている。
湯は無色透明で、単純温泉。
43℃ある。
熱い。
地元のおじいちゃんたちが平然と浸かっている。
「観光ですか」と聞かれた。
「焼き物を見に来た」と答えたら、
「ああ、美山ね」と笑われた。
露天風呂から、吹上浜の松林が見える。
海は見えないが、風が松を揺らす音がする。
15分で限界になって上がった。
でも、体の芯まで温まった感覚は
夜まで続いた。
島津義弘公墓|草の中に、あの武将が眠っている
正直、場所を探すのに10分かかった。
案内板はあるが、小さい。
Googleマップでも迷う。
細い山道を歩いていくと、
木立の中に石塔が見えてくる。
島津義弘。
関ヶ原で西軍として戦い、
敵中を突破して薩摩に帰り着いた武将だ。
「鬼島津」と徳川方に恐れられた人物が、
ここに眠っている。
観光客は誰もいない。
花が供えてあった。
誰かが今も来ている。
墓の前に立つと、静かすぎて少し怖かった。
鳥の声しか聞こえない。
歴史の教科書に出てくる人物が、
こんなひっそりした場所にいる。
そのギャップが妙にリアルだ。
帰りに振り返ったら、
木漏れ日が石塔に当たっている。