大分の山あいに、江戸時代がそのまま眠っている町がある。 日田。 幕府の直轄地だったこの場所には、商人たちが残した蔵と石畳がある。 冬の朝、川から立ち上る靄を見た瞬間に思った。 ここは、急いで観るところじゃない。 ゆっくり歩いて、ゆっくり食べて、ゆっくり感じる場所だと。
日田のおすすめスポット
豆田町(重伝建)|江戸の空気が、まだここに残っている
石畳を踏んだ瞬間、空気が変わった。
豆田町に入るのに、チケットもガイドも要らない。
ただ歩くだけでいい。
天領時代に栄えた商家の建物が、今も現役で並んでいる。
醤油屋、酒蔵、薬屋。
そのどれもが、ちゃんと生きている店だ。
草野本家は1688年創業の醤油醸造元。
300年以上前の建物に入ると、木と醤油の匂いがした。
リノベじゃない、本物の時間の匂いだ。
通りの長さはおよそ400メートル。
歩けば30分もかからない。
でも気づいたら2時間たっている。
路地に入ると、また別の路地がある。
そのたびに発見があった。
冬の平日は人が少なくて、石畳に自分の足音だけが響く。
それが、妙によかった。
三隈川の鵜飼い|暗闇に揺れる篝火が、1300年前とつながる
まず、乗合の屋形船に乗る。
料金は大人3,500円ほど。
出航は夜の19時すぎ。
川の上は、思ったより静かだ。
話し声が吸い込まれていく感じがする。
しばらくすると、篝火が見える。
鵜匠の船だ。
炎が川面に揺れて、その下に鵜が潜っていく。
あの動きは、説明されなくてもわかる。
生き物と人間が、息を合わせているのが見える。
日田の鵜飼いは毎年6月から9月の開催。
1300年以上の歴史があるという。
でも現地で見るまで、そのすごさはピンとこない。
終わったあと、屋形船の上でぼんやりしていたら、鵜匠がすぐそばを通っていった。
鵜を腕にとまらせたまま、静かに闇に消えていった。
その背中が、ずっと頭に残っている。
天領日田おひなまつり|町ぜんぶが、ひな人形の展示会場だ
2月から3月初旬にかけて、豆田町が変わる。
商家の店先に、ひな人形が並ぶ。
それが、一軒じゃない。
町全体で行われる「天領日田おひなまつり」だ。
古い商家の中に、江戸・明治期のひな人形が飾られる。
博物館じゃなくて、その家で代々受け継がれてきた人形たちだ。
ガラスケース越しじゃなく、すぐ近くで見られる場所も多かった。
草野本家では、江戸時代のひな道具が並んでいた。
小さな膳や椀まで、本物の漆塗りだ。
こんなものが、ここに残っていたのか。
期間中は参加施設が20軒以上。
入場料は施設ごとに200〜500円ほど。
全部回ろうとすると、半日じゃ足りない。
冬の日田に来るなら、この時期を狙ってほしい。
人形と石畳と、冷たい空気が重なって、妙な美しさがあった。
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日田への行き方
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