山が深すぎて、空が狭い。 そう感じた瞬間、祖谷にいると実感する。 徳島の山奥、車で走っても走っても集落が出てこない。 それでも人は昔からここで生きてきた。 かずら橋を渡り、霧の中の集落を歩き、温泉に沈む。 日本にまだこんな場所が残っている。
祖谷のおすすめスポット
祖谷のかずら橋|足元が揺れる。それでも渡りたくなる
橋の前に着いたのは朝9時すぎ。
それでもすでに数人並んでいた。
シラクチカズラを編んで作られた橋。
長さ45メートル、高さ14メートル。
足元の隙間から川が見える。
見てはいけない気がして、見てしまう。
一人ずつしか渡れない。
揺れる。めちゃくちゃ揺れる。
足を踏み出すたびにギシッと音がして、
「本当に大丈夫か」と何度も思った。
でも渡りきったとき、妙な達成感があった。
怖かったけど、渡ってよかった。
対岸から振り返ると、藤色に染まった橋が岩肌に溶け込んでいた。
3年に一度、架け替えられるらしい。
今渡っているこの橋は、いつ架けたものなのか。
そんなことを考えながら、しばらくその場を離れられない。
落合集落|霧の中に、江戸時代が残っている
展望台から見下ろしたとき、声が出ない。
急斜面にへばりつくように、石垣と茅葺きの家が並ぶ。
標高差約390メートル。
その斜面を、人は何百年も耕してきた。
集落に降りる道は細くて急だ。
車はほぼ通れない。
徒歩で降りて、石垣の間をゆっくり歩く。
今も人が住んでいる。
畑には野菜が植わっていて、洗濯物が干してあった。
観光地というより、生活の場だ。
江戸時代の姿がそのまま残っているとされる集落。
国の重要伝統的建造物群保存地区にも選ばれている。
でもそんな肩書きより、
「ここで暮らすってどういうことだろう」
と考えさせられた。
霧が出てきて、集落が少し霞んだ。
その景色が、妙にリアルで美しかった。
祖谷温泉|ケーブルカーで降りる、渓谷の湯
これは予想外だ。
温泉に入るために、ケーブルカーに乗る。
高低差170メートルを約5分かけて下る。
到着するのは、祖谷川のすぐそばの露天風呂。
周りは山と川だけ。
空の切れ目から青が見える。
湯温は41〜42度くらい。
ちょうどいい。
重曹泉のお湯は少しぬるっとしていて、
肌がすっとなめらかになる感じがした。
ケーブルカーの最終便は16:30。
乗り遅れると徒歩で急斜面を登るしかない。
時間は絶対に確認すること。
それと、混浴だ。
水着着用可なので、心配な人は持参を。
日帰り入浴もできるけど、
ここは泊まってゆっくり入るのがいい。
夕方と朝で、川の表情がまったく違う。
琵琶の滝|かずら橋の近く、5分で行ける別世界
かずら橋から歩いて5分もかからない。
なのに、ほとんどの人が素通りしていく。
琵琶の滝は、落差50メートル。
岩肌を白い水が一直線に落ちていく。
平家の落人がこの滝のそばで琵琶を弾いた、という伝説がある。
都を追われ、こんな山奥まで逃げてきた人たちが、
ここで音楽を奏でていたのかと思うと、
急に空気が違って感じられる。
滝の前まで近づける。
しぶきが顔にかかる距離まで。
夏でもひんやりしていて、
しばらくその場から動きたくない。
かずら橋の人混みが嘘みたいに、静かだ。
祖谷にはこういう場所が多い。
有名どころの一歩先に、もっと深い景色がある。
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祖谷への行き方
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