徳島の山奥に、こんな場所があったのか。 大歩危に初めて足を踏み入れたとき、正直そう思った。 切り立つ岩壁、青く透き通る吉野川、人の声がしない山の静けさ。 「秘境」という言葉をよく聞くけれど、ここはその言葉が軽く感じるほどの場所だ。
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大歩危峡|水の色が、おかしい。透明なのに青い。
遊覧船乗り場に着いたのは朝9時すぎ。
料金は大人1,200円。
乗船時間は約30分ほど。
それだけ聞くと「まあそんなもんか」。
でも、船が動き出した瞬間に黙った。
両岸に迫る岩が、想像より3倍は高かった。
1億数千万年前に形成されたという結晶片岩。
白と灰と黒が混ざり合って、まるで抽象画みたいに見える。
川の色が、変だ。
ターコイズブルーとでも言うのか。
そんな色の川を、生で見たことがない。
船頭さんが「増水すると色が変わる」と言っている。
この日は晴れが続いた後で、最高の透明度だったらしい。
タイミングを引いただ。
岩の上に小さな地蔵が立っている。
「あそこまで水が来たことがある」と指さす場所を見て、ぞっとした。
自然は、きれいなだけじゃない。
祖谷のかずら橋|怖い。怖いけど、渡った。
正直に言う。
高所恐怖症ではないのに、足がすくんだ。
かずら橋は、シラクチカズラというつるで編まれた橋。
長さ45m、水面からの高さが14m。
3年ごとに架け替えるらしい。
入橋料は550円。
「え、渡るだけで?」と思ったけど、渡り始めてすぐに納得した。
足元の板と板の隙間から、川が見える。
橋がゆらゆら揺れる。
そしてそれが止まらない。
前を歩く人が足を踏み出すたびに、こっちまで揺れる。
グリップを握る手に、知らず知らず力が入っている。
渡りきった先で振り返る。
緑の山と、古びた橋と、その下を流れる祖谷川。
写真で何度も見た景色なのに、実際に立つと全然違う。
平家の落人がこの橋を渡り、追手が来たら切り落としたという。
そこまで追い詰められた人たちが辿り着いた場所が、ここだ。
景色の美しさが、少し切ない色に変わった。
平家屋敷|800年前の逃亡者の話が、妙にリアルだ。
かずら橋から車で10分ほど走ると、急に古い茅葺き屋根が現れる。
平家屋敷民俗資料館。
入館料は410円。
正直、最初は「資料館か」と少し気が緩んでいた。
でも中に入ると、空気が違った。
薄暗くて、古い木の匂いがして、静かすぎる。
展示されているのは平家ゆかりの武具や古文書、生活道具。
それ自体より、建物そのものに圧倒された。
平家の落人・田内越前守の子孫が800年住み続けた家だという。
今も末裔の方が管理しているらしい。
壇ノ浦で敗れた平家の人々が、ここまで逃げてきた。
追われながら、山を越えながら、このかずら橋の前まで来て。
そこで生きることを選んだ。
外に出ると、山が静かにそびえている。
逃げ込むには完璧な場所だと、今なら少しわかる気がした。
歴史好きじゃなくても、ここは来てほしい。
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