有明海に面した小さな城下町、鹿島。 観光地として大きく名が売れているわけじゃない。 でもそこには、杉玉が揺れる酒蔵の路地があって、 千年近い歴史を刻む神社があって、 潮の匂いがする古い港町がある。 派手さはない。 ただ、歩くたびに何かを発見する。 そういう旅が好きな人に、鹿島はじわじわと効いてくる。
鹿島のおすすめスポット
鹿島酒蔵ツーリズム|路地の奥から、酒の匂いがした
鹿島の中心部に足を踏み入れると、すぐ気づく。
町が、酒と一緒に生きているということに。
肥前浜宿の一角に酒蔵が軒を連ねている。
五軒ほどが近い距離に集まっていて、
歩いて回れるのが正直ありがたかった。
毎年3月に開催される酒蔵ツーリズムは、
普段は入れない蔵の中まで開放される。
仕込み水を触らせてもらったとき、ひんやりと冷たかった。
その水が、あの酒になるのか。
試飲チケットは1,500円で5枚綴り。
甘口から辛口まで、蔵ごとに全然違う顔を持っている。
3杯目あたりで、ほんのり顔が熱くなった。
イベントなしの時期でも、直売所は開いている蔵が多い。
「今年の新酒入ってますよ」と声をかけてくれたおじさんが、
蔵の歴史を20分くらい話してくれた。
そういう時間が、鹿島の旅では普通に起きる。
祐徳稲荷神社|階段を上るたびに、赤が深くなっていく
日本三大稲荷のひとつ、と聞いている。
でも実際に行くまで、規模がまったく想像できない。
鳥居をくぐると、朱塗りの楼門が現れる。
高さは17メートルあるらしい。
見上げた瞬間、思わず声が出た。
本殿まで続く石段は約200段。
きつい、とは聞いている。
実際きつかった。
でも振り返るたびに境内の全景が広がって、
有明海がうっすら見えて、立ち止まるたびに得をした気分になった。
奥之院まで足を伸ばすなら、さらに山道を20分ほど歩く。
そこまで来ると人がぐっと少なくなる。
木々の間から差し込む光と、静かな空気だけがある。
参拝の後は、門前の通りで稲荷ずしと甘酒を食べた。
稲荷ずしは1個130円。
甘すぎず、ちょうどよかった。
そのまましばらく、石段に座って境内を眺めた。
そういう時間があってもいい。
浜庄津町浜中町|潮の匂いがする、時間の止まった路地
正直、最初は地図を見て迷った。
「浜庄津町浜中町」という長い地名が、どこを指すのかよくわからない。
たどり着いたのは、有明海沿いの古い集落だ。
江戸時代の港町の名残が、そのまま残っている。
なまこ壁の土蔵、石畳の路地、古い商家の軒先。
観光のために整備された感じがしない。
そこがよかった。
住んでいる人の生活と、歴史が混ざり合っている。
洗濯物が干してあったり、猫が塀の上で寝ていたり。
カメラを向けると、なんだか申し訳ない気もした。
干潮の時間を調べて行くといい。
有明海の干潟がすっかり現れる。
水平線まで続くような泥の海は、見たことのない景色だ。
干潟の上をムツゴロウが跳ねているのが、肉眼でも見える。
夕方に訪れたら、空がオレンジに染まった。
その色が干潟に映っている。
1時間くらい、ただ立っている。