松尾芭蕉が「雨に西施がねぶの花」と詠んだ地。 そう聞いて、飛んできる。 秋田の最南端、鳥海山のふもとに広がる象潟は、 かつて海だった場所だ。 今は田んぼの中に小島が浮かぶ。 その光景が、どこか夢の中みたいで、 着いた瞬間から時間の感覚がおかしくなった。
象潟のおすすめスポット
蚶満寺|芭蕉が泊まった夜の、静けさがまだある
拝観料は300円。
境内に入ると、いきなり静かになる。
車の音が消えた。
蚶満寺は奈良時代に建てられたとされる古刹で、
芭蕉が「おくのほそ道」の旅で実際に宿泊した場所だ。
その事実を境内で知って、少しぞっとした。
約300年前の俳人が見たのと、ほぼ同じ景色がここにある。
境内には西施像が立っている。
芭蕉の句に登場する中国の美女だ。
意外と小ぶりで、苔むした台座の上に静かにいた。
蓮池が有名で、7月下旬から8月上旬が見頃。
満開の時期に来ると、池の面が花で埋め尽くされる。
それを見た人が、言葉を失うのはわかる気がした。
春は桜、秋は紅葉。
季節ごとに表情が変わるから、何度でも来たくなる場所だ。
九十九島展望台|田んぼに島が浮かぶ、意味がわからない絶景
展望台に上がった瞬間、「え」と声が出た。
田んぼの中に、小さな島がいくつも浮いている。
数えてみると、確かに多い。
「九十九島」というのは数が多いことを表す言葉で、
実際には約100の小島がある。
もとは松島のように海が広がっていた場所だ。
1804年の大地震で地盤が隆起し、海が陸になった。
その島だけが残る。
そう知ってから改めて見ると、景色の意味が変わった。
展望台は無料で、象潟の道の駅「ねむの丘」の4階にある。
駐車場も広くて、アクセスしやすい。
早朝6時頃に来ると、朝靄の中に島が浮かんで、
現実感がまるでない景色になる。
夕方もいい。
鳥海山に日が落ちていく時間帯、
オレンジに染まった空の下に島のシルエットが並ぶ。
カメラを持ってくればよかったと、本気で後悔した。
鳥海山展望|でかすぎて、笑いが出た
標高2,236メートル。
東北第2位の高さを誇る鳥海山は、
象潟からだと視界いっぱいに広がる。
「でかい」という言葉しか出てこない。
特に冬から春にかけて雪をまとった姿は、
「出羽富士」と呼ばれるのが納得できる端正さだ。
道の駅「ねむの丘」の展望台からも見えるが、
もっとおすすめなのは早朝の田んぼ道を歩きながら見上げること。
九十九島の島々を手前に、鳥海山が奥にそびえる構図は、
どんなカメラアプリでも加工できないリアルさがある。
5月頃は山腹に雪が残り、青空との対比が鮮やかだ。
天気が良ければ、50キロ以上離れた場所からも見える。
それほどの存在感がある山だ。
象潟に来て、鳥海山を無視して帰る人はたぶんいない。
空気が澄んでいる朝、絶対に見てほしい。