都会の音が、ここには届かない。 川があって、橋があって、風がある。 ただそれだけなのに、なぜか胸が詰まる。 四万十川は「最後の清流」と呼ばれる。 その言葉の意味を、実際に来てはじめて理解した。 きれいとか美しいとか、そんな言葉では足りない。 ここには、忘れていた何かがある。
四万十川のおすすめスポット
佐田沈下橋|欄干のない橋に立つと、川と空しかない
四万十川には47本の沈下橋がある。
そのなかで最も長く、最も有名なのが佐田沈下橋だ。
全長291.6メートル。
欄干がない。
それだけで、もう別世界だ。
橋の真ん中に立った。
足元に川が流れている。
ガードレールも手すりも何もない。
ただ、コンクリートと川と空だけ。
朝7時ごろに行ったのが正解だ。
観光客はまだほとんどいない。
地元のおじさんが自転車で渡っていった。
ここは「見せる橋」じゃなく、生活の橋なんだと気づいた瞬間だ。
水が透き通っている。
底の石が見える深さなのに、川幅は広い。
増水時には橋ごと沈む設計だから、欄干をつけない。
そういう合理性が、なぜかひどく美しく見える。
夕方にも訪れた。
光の色が変わって、また別の橋になっている。
四万十川屋形船|川の上でしか食べられない、あの鮎の味
正直、「屋形船」という言葉に少し身構えている。
どこか観光っぽいイメージがあったから。
でも実際に乗ったら、そんな先入観は5分で消えた。
船がゆっくり動き出すと、川が変わって見える。
岸から見るのとは全然違う。
川の真ん中から見る沈下橋は、低くて、長くて、なんとも言えない存在感だ。
料理が出てきた。
天然鮎の塩焼き。
うなぎの蒲焼き。
それから川海老の唐揚げ。
川海老は殻ごとバリバリ食べる。
こんなに甘い海老は初めてだ。
鮎は脂がのっていて、苦みがちゃんとある。
川の上で食べているせいか、やたらうまく感じた。
たぶんそれだけじゃなく、本当にうまかった。
コースは約1時間半。
料金は8,000円〜10,000円ほど。
予約は必須で、繁忙期は1週間前でも埋まっている。
早めに押さえておくこと、強くすすめる。
四万十市街|川の町は、夜になると急に素顔になる
四万十市の中心街、中村。
昼間に歩くと、地方の静かな商店街という感じだ。
でも夕方になると、空気が変わる。
駅前から少し歩いたところに、地元の居酒屋が並ぶ路地がある。
カウンターだけの小さな店に入った。
ビールを頼んだら、突き出しに川海老が出てきた。
この町では、川のものが当たり前に食卓に並ぶ。
地元のおじさんと話した。
「昔はもっと川で遊んだ」と言っている。
四万十川は観光地になったけど、地元の人にとっては今も日常の川らしい。
その話を聞いて、なんとなくほっとした。
アーケード商店街の「あったか市場」では、地元の野菜や加工品が買える。
翌朝の朝食用に、地元の豆腐と野菜を買った。
400円だ。
川の近くに一晩泊まると、朝靄の四万十川が見られる。
その光景だけで、泊まってよかった。
それくらい、朝の川は別格だ。