徳島の奥地へ向かう道は、途中から別の時間が流れている。 山が深くなるにつれ、空気が変わる。 川の色が変わる。 人の声が遠くなる。 三好はそういう場所だ。 観光地というより、別世界への入口。 一度行くと、また行きたくなる理由が、うまく言葉にできない。
三好のおすすめスポット
かずら橋|足元が揺れるたびに、笑いが止まらなくなる
渡り始めた瞬間、思わず声が出た。
ぐらぐらする。
ちゃんとぐらぐらする。
サンダル厳禁なのが、渡ってみて初めてわかった。
橋の長さは45メートル。
幅はせいぜい1メートルちょっと。
足の下に隙間があって、14メートル下の祖谷川が見える。
スリルというより、もはや修行だ。
シラクチカズラという植物で編まれていて、3年ごとに架け替えられている。
太いツルが束になって、ちゃんと人を支えている。
それがわかっていても怖い。
渡り終えたあと、しばらく橋を眺めた。
よくこんなものを作った。
昔の人がここを日常的に渡っていたというのが、信じられない。
早朝に行くと観光客が少ない。
8時台は特に空いている。
混雑時は橋の上で渋滞が起きて、揺れが増す。
それはそれで面白いだ。
大歩危峡|この色の川を、ほかで見たことがない
大歩危峡の川の色を、どう説明すればいいのか。
エメラルドとも違う。
青とも違う。
透き通っていて、それでいて深い。
遊覧船に乗ったのは午前11時ごろ。
所要時間は約30分、料金は1,200円。
船頭さんが岩の名前をひとつひとつ教えてくれた。
「これが○○岩」と言うたびに笑いが起きて、なごやかな時間だ。
船から見上げる岸壁が、想像より高かった。
奇岩が続いて、どこを見ても飽きない。
シャッターを押す手が止まらない。
遊覧船を降りたあと、川沿いの遊歩道を少し歩いた。
水が本当に透明で、川底の石がはっきり見える。
夏に来たら、絶対に入りたくなる。
道の駅「大歩危」が近くにある。
そこのソフトクリームを食べながら、もう一度川を眺めた。
ただそれだけで、十分な時間だ。
祖谷渓|見下ろした先に、小便小僧がいた
祖谷渓の展望台へ向かう道が、すでに絶景だ。
ガードレールの向こうは崖。
車一台ぶんの幅しかない道が続く。
対向車が来るたびに、ひやっとした。
「祖谷渓・小便小僧」という看板を見て、何のことか。
展望台に立つと、崖の端に小さな銅像がある。
崖っぷちで放尿している少年の像だ。
なぜここにあるのか、誰がいつ作ったのか。
調べてみたら、昔の子どもたちが度胸試しで崖に立っていたことが由来らしい。
像のことはさておき、眺めは本物だ。
V字に切り込んだ渓谷が眼下に広がって、川がキラキラしている。
深さは200メートルほどある。
高所恐怖症の人には少し厳しい場所だ。
秋は特にいい。
10月下旬から11月上旬、紅葉が渓谷を染める。
その時期に行った友人の写真を見て、次は秋に来ようと決めた。