新幹線を降りた瞬間、空気が変わる。 東北の風は、どこかひんやりして清い。 奥州市は、教科書で読んだ歴史が地面の下に眠っている場所だ。 遺跡を歩いて、古い武家屋敷に入って、夕方には前沢牛を食べる。 そういう一日が、ここでは普通に成立する。
奥州のおすすめスポット
胆沢城跡|1200年前の「国境」に、ひとり立つ
広い。
とにかく広い。
着いてまず思ったのはそれだ。
胆沢城は、797年に坂上田村麻呂が築いた城だ。
蝦夷との最前線として機能した、東北支配の拠点。
今は石碑と復元された外郭南門が残るだけだが、それが逆にいい。
何もない広大な土地に立つと、風の音だけ聞こえる。
1200年前、ここに兵士たちがいた。
その事実が、足元から伝わってくるような感覚がある。
南門は高さ約10メートル。
存在感がある。
復元とわかっていても、前に立つと圧倒された。
観光客は少ない。
ほぼ貸し切り状態で歩けた。
ゆっくり1時間は使いたい場所だ。
駐車場は無料。
アクセスは車が便利。
水沢江刺駅から車で約10分ほどかかる。
武家住宅資料館|時間が止まった家の中に、入れてもらう
玄関をくぐった瞬間、ひんやりした空気が来た。
夏でも、ここだけ涼しい。
武家住宅資料館は、江戸時代の武士の暮らしをそのまま残した施設だ。
旧内田家住宅を中心に、当時の生活道具が展示されている。
囲炉裏の周りに並んだ道具たち。
農具、食器、箪笥。
どれも「使われていたもの」の質感がある。
博物館のガラスケースの中じゃなく、部屋の中に置いてある。
それが全然違う。
「ここに人が住んでいた」という感覚が、生々しく迫ってくる。
入館料は大人200円。
安すぎて逆に申し訳なくなった。
スタッフの方が丁寧に説明してくれた。
質問すると、どんどん話が広がる。
時間があれば、ぜひ話しかけてみてほしい。
所要時間は約45分。
午前中に訪れるのがおすすめだ。
前沢牛|一口で、全部持っていかれる
食べるまで、正直なめている。
ブランド牛なんて、どこも似たようなものだろう。
一口食べて、考えが変わった。
前沢牛は、岩手県奥州市前沢区で育てられた黒毛和牛だ。
生産頭数が少なく、厳しい基準をクリアしたものだけが「前沢牛」を名乗れる。
頼んだのはサーロインステーキ200グラム。
値段は約7,000円だ。
高いと思いながら注文した。
焼き加減はミディアムレア。
切った断面が、光を吸い込むような赤だ。
口に入れた瞬間、溶けた。
脂の甘みが広がって、肉の旨みがあとから来る。
噛むほどに、また旨みが出てくる。
気づいたら、無言で食べている。
前沢牛を出す店は市内にいくつかある。
「前沢牛オガタ」は直営で安定している。
予約しておくと安心だ。
ランチ営業もあり、比較的リーズナブルに食べられるコースもある。