中津という街は、思ったより静かだ。 城下町の空気が残る路地を歩いていると、時間の流れがゆるやかになる感じがした。 歴史と、からあげの匂いと、川の風が混ざり合う町。 九州の片隅で、こんなに濃い一日を過ごせるとは思っていない。
中津のおすすめスポット
中津城|川べりに立つ城は、思ったより孤独だ
山国川沿いに、ぽつんと天守閣が立っている。
周囲に高い建物がないせいか、やけに空との距離が近い。
入場料は400円。
それほど広くない敷地を歩いていると、石垣の積み方が途中で変わる部分に気づいた。
黒田孝高が築き、細川忠興が継いだ。
2人の武将の手が、石一つひとつに残っている。
天守閣の最上階まで上ると、中津市街と川が一望できる。
観光客は平日なら数人程度。
スタッフのおじさんが「珍しいでしょ、あの石垣の継ぎ目」と声をかけてきた。
その一言で、見方が変わった。
城の裏手に回ると、川風が強く吹いてきた。
干潮のタイミングだったのか、川底が少し見えている。
誰もいない場所で、しばらく水の音だけを聞いている。
福沢諭吉旧居|一万円札の人が、ここで子ども時代を過ごした
正直に言うと、最初はあまり期待していない。
「偉人の旧居」ってどこも似たような展示だろう。
入ってすぐ、その考えが変わった。
旧居は中津藩の下級武士の家そのもの。
土間、板の間、小さな庭。
広くもなく、豪華でもない。
一万円札の顔の人が育った場所とは思えない、ごく普通の家だ。
入場料は500円で、隣の記念館もセットで見られる。
記念館には諭吉の直筆資料や年表があり、思わず30分以上いてしまった。
「学問のすすめ」の初版本の実物が展示されていて、思っていたより薄い本だと気づいた。
スタッフのガイドさんが「諭吉は中津の方言をずっと話していたそうです」と話してくれた。
なんとなく親しみが湧いた。
旧居の縁側に座って、庭を眺めた。
ここで彼も、同じ空を見ていただ。
中津唐揚げ|街全体がからあげ屋だ
中津駅を出た瞬間、油の匂いがした。
大げさじゃなく、本当にした。
市内にからあげ専門店が70軒以上ある。
持ち帰り専門の小さな店が、商店街や住宅街にも普通に並んでいる。
今回入ったのは駅から徒歩5分ほどの「からあげ専門店・村上」。
100グラム180円という値段に少し驚いた。
注文してから2〜3分で揚げてくれる。
受け取った袋の中身は、想像よりふた回り大きかった。
外はカリッと、中は驚くほどジューシー。
胸肉なのに、パサつきが一切ない。
にんにくと醤油の香りが鼻を通り抜ける。
立ったまま、袋から直接食べた。
お行儀が悪いとわかっていたけれど、それが正解だ。
店によって味が全然違う。
醤油ベース、塩ベース、スパイス系。
「食べ比べ」を目的に来るのもありだ。
半日あれば3軒は回れる。