青森の地図を眺めていると、陸奥湾の奥に小さな町がある。 野辺地。 読み方すら知らない。 でも、冬の防雪原林の写真を見た瞬間に、行くことを決めた。 港町の静けさと、歴史の重さと、黄色い菜の花が混在する場所。 派手さは何もない。 それが、かえってよかった。
野辺地のおすすめスポット
野辺地防雪原林|日本最古の防雪林が、冬の光の中に立っている
明治時代に植えられた木々が、今も現役で風を防いでいる。
日本最古の防雪原林、と聞いても最初はピンとこない。
でも実際に足を踏み入れると、空気が変わった。
樹齢100年を超えるカラマツやスギが、隙間なく並んでいる。
幹の太さが尋常じゃない。
冬の午後2時、木漏れ日が雪面にうっすら落ちている。
国道4号線沿いにあって、駐車場から歩いて5分もかからない。
そんな場所にこれがある、という驚きがあった。
雪がない季節も悪くない。
でも、白と茶と緑だけの冬の色の中に立ったとき、
この林が「必要だった」理由を、体で感じた気がした。
誰もいない。
静かすぎて、自分の息だけが聞こえる。
常夜灯(野辺地港)|幕末から動かず、港を照らし続けている
1845年に建てられた常夜灯が、野辺地港の端に立っている。
幕末、ここは北前船の寄港地として栄えた。
その時代から、ずっとここにある。
高さは約3メートル。
石造りで、思ったより小ぶりだ。
でも近づくと、表面に刻まれた年号が目に入ってきて、足が止まった。
嘉永元年。
ペリーが来る5年前だ。
冬の港は人がほとんどいない。
風が強くて、耳が痛くなるくらい寒い。
陸奥湾がグレーに広がっていて、対岸の下北半島がうっすら見える。
誰かが毎晩ここに火を灯していた時代があった。
そのことを想像しながら、しばらく動けない。
駐車スペースは港の脇に2〜3台分ある。
観光地っぽい整備は何もない。
そのままの状態で、そこにある。
横浜町のなたね畑|菜の花と風車と、ここまで来た甲斐
野辺地から車で20分も走ると、横浜町に入る。
「横浜」と書いて「よこはま」と読む、青森の小さな町。
5月になると、国道279号線沿いが一面の黄色になる。
日本最大級の菜種産地、というのは後から知った事実で、
目の前の景色に言葉が追いつかない。
地平線まで続く黄色。
その向こうに陸奥湾。
さらに奥に下北半島の稜線。
風車も回っていて、なんだか現実感がない。
ただ、冬に来ると当然、菜の花はない。
それでも来た。
広大な畑の土が、冬の光でぼんやり輝いていて、
「春にはここが黄色になるのか」と想像するだけで、十分だ。
道の駅「よこはま」で菜種油を買って帰った。
500円ちょっとで買えるのに、使うたびに旅を思い出す。