冬の鋸山は、静かだ。 観光客も少なく、風が冷たく、空気が澄んでいる。 それがかえって良かった。 石を切り出した断崖が、剥き出しのまま空に向かってそそり立つ。 千葉にこんな場所があるのかと、正直なめている。 来てみて、考えが変わった。
鋸山のおすすめスポット
鋸山ロープウェー|4分間で、別の世界へ連れていかれる
乗車時間は約4分。
たったそれだけで、標高329mの山頂近くまで上がる。
冬の朝イチに乗ると、東京湾が靄の向こうに広がっている。
ぼんやりした水平線に富士山のシルエットが浮かんでいて、声が出ない。
ゴンドラは定員30名ほど。
窓ガラス越しに、剥き出しの岩肌がどんどん近づいてくる。
あの岩が人の手で切られたものだと知ると、ぞわっとした。
山頂駅から日本寺側への入山には、別途拝観料が必要。
大人700円を払って、先へ進んだ。
午前中の早い時間帯なら、ほぼ貸し切り状態になる。
ロープウェーは強風時に運休することがある。
冬場は特に天気予報を確認してから向かいたい。
百尺観音|戦争の記憶が、岩に刻まれている
大きさに、まず圧倒される。
高さ約30m。
岩壁をそのまま彫り抜いた、巨大な観音像。
戦争犠牲者の慰霊と、航海・航空・陸上交通の安全を祈って彫られた。
昭和41年完成というから、そう古い話でもない。
でも岩が古いから、どこか時代を超えた雰囲気がある。
観音像の前に立つと、見上げるしかない。
首が痛くなるくらい、上を向いた。
冬の平日は参拝者が少なく、しばらくひとりで向き合っている。
風が吹くたびに、岩に囲まれた空間に音が反響する。
不思議な静けさだ。
観光地的な賑やかさとは無縁の場所。
ここだけ、時間の流れが違う気がした。
地獄のぞき|足がすくんで、動けなくなった
「地獄のぞき」という名前を聞いて、大げさだ。
実際に立ってみて、考えを改めた。
岩が突き出したその先端に立つと、足元は垂直に切り落ちている。
下まで100m以上。
柵はあるけれど、体が正直に反応した。
足がすくんで、一歩が踏み出せない。
前の人が先端まで歩いていくのを見て、震えた。
高所恐怖症でなくても、あの場所は膝が笑う。
冬場は空気が澄んでいて、遠くまで見渡せた。
東京湾と、対岸の三浦半島。
天気が良ければ富士山も見える。
怖いけど、怖いから来てよかった。
そういう場所だ。
混雑時は先端まで長蛇の列になることもある。
早朝か、冬の平日に来るのが正解。