鹿児島市から車で2時間半。 そこから先は、もう「端っこ」の空気になる。 野間池は、薩摩半島の西の果てにある小さな漁港だ。 フェリーに乗れば甑島へ渡れる。 でも、渡らなくてもいい。 ここ自体が、すでに十分すぎるくらい遠い場所だ。
野間池のおすすめスポット
野間池港|朝5時、漁師と猫しかいない港
朝イチで港に下りた。
誰もいない、と思ったら違った。
漁師が2人、黙って網を直している。
猫が1匹、岸壁の端に座っている。
それだけだ。
港の空気は塩と魚の匂いがする。
観光地の「漁港感」じゃない。
本物の漁港の、飾らない匂いだ。
透明度が高くて、海底まで見える。
水深3〜4メートルはありそうなのに、底の岩が見える。
思わず膝をついて、のぞき込んだ。
朝7時頃になると、フェリー乗り場に人が集まり始める。
甑島行きの乗客だ。
港が少しだけ動き出す、その瞬間が好きだ。
売店も観光案内所もない。
トイレは港の端にひとつ。
それでいい、という気持ちになる場所だ。
野間岬|岬の先に立つと、水平線しかない
港から車で10分ほど南下すると、野間岬に出る。
道が細くなって、集落が消えて、木が増える。
そのうち視界が開ける。
灯台の手前に小さな駐車スペースがある。
3台止まれれば限界だ。
岬の先端まで歩いて5分。
足元は草と岩。
整備された遊歩道じゃない。
ちょっと足元を選びながら進む。
先端に立つと、正面に何もない。
海と空だけ。
水平線が半円を描いている。
東シナ海だ。
風が強かった。
帽子を押さえながら、しばらく立ち尽くした。
遠くに甑島が浮いて見える。
あの島まで、フェリーで1時間ちょっとらしい。
観光スポットとして整備されているわけじゃない。
だから人も少ない。
それがいい。
誰かと共有しなくていい景色だ。
甑島フェリー(野間池港発)|渡らなくても、見送るだけで旅になる
野間池港から甑島・里港へ向かうフェリー「甑島」が出る。
所要時間は約1時間10分。
料金は大人1,720円(片道)。
乗らない。
でも出港を見送った。
9時台の便が出るとき、港に10人くらいが乗り込んだ。
キャリーバッグを持った人、釣り道具を抱えた人、地元のおじいさん。
みんなそれぞれの理由で、あの船に乗る。
エンジンの音が変わって、ロープが外れる。
船がゆっくり離れていく。
その間、3分もない。
船が沖に出ていくのを、岸壁に立って眺めた。
小さくなって、水平線に消えた。
次来るときは、乗ろう。
そう思わせてくれる出港だ。
フェリーの時刻は季節や曜日で変わる。
事前に確認してから動いたほうがいい。