那覇から車で2時間北上すると、空気が変わる。 リゾートの喧騒がすっと消えて、山と川と集落だけが残る。 大宜味村は、沖縄の長寿の里として知られてはいるけど、 そんな肩書きより先に、ここには「時間のゆるみ方」がある。 それを感じに来た。
大宜味のおすすめスポット
塩屋大綱引き|数百人が一本の綱に、本気で引き合う夜
毎年旧暦の8月15日、塩屋の集落が一変する。
昼間はただの静かな漁村だ。
それが夜になると、どこからともなく人が集まってくる。
地元の人、県内からの帰省客、呼び寄せられた旅人。
綱の直径は30センチ以上ある。
引く前に綱を持った瞬間、その重さにちょっと笑ってしまった。
これ、本当に動くのか。
「ハーイヤ、ハーイヤ」のかけ声が始まると、空気が締まる。
数百人が本気で引いている。
観光客向けの体験とは全然違う、集落の「本気の行事」だ。
東西に別れて引き合い、勝敗が決まると集落全体が歓声に包まれる。
終わった後、おじいが缶ビールを渡してくれた。
何も言わず、ただにっこりして。
その顔が、この祭りのすべてを語っている。
芭蕉布会館|糸一本に、数十年がかかる
芭蕉布会館に着いたのは午前10時ごろだ。
入館料は300円。
安すぎる、と思ったのは中に入ってからだ。
芭蕉布は、バナナに似た植物「糸芭蕉」から糸を取り出して織る布。
沖縄全体で、今や作り手は数十人しかいない。
そのうちの何人かが、この大宜味村にいる。
工房のガラス越しに、女性が機織りをしている。
音は、コトン、コトン。
それだけだ。
1反の芭蕉布を仕上げるのに、早くて半年かかると聞いた。
素材の栽培から数えると、もっとかかる。
展示室に着物が一着飾ってあった。
価格は120万円を超えている。
高いとは思わない。
その値段の意味が、少しわかった気がした。
「一度触ってみてください」とスタッフさんが言った。
さらっとした、不思議な軽さだ。
夏に着たら、きっと涼しい。
大宜味のシークヮーサー畑|11月、山全体が黄色くなる
大宜味村は、シークヮーサーの生産量が国内トップクラスだ。
数字で聞いてもピンとこなかったけど、実際に山道を走るとわかる。
11月の収穫期、道沿いの畑がすべて黄色に染まっている。
小さな実がびっしりと枝についていて、
それがずっと奥まで続いている。
立ち寄った直売所で、シークヮーサー100%のジュースを飲んだ。
1杯200円だ。
酸っぱくて、苦くて、後から甘みが来る。
ペットボトルで売られているものとは別物だ。
畑のそばで、80代くらいのおじいが一人で作業している。
シークヮーサーを一個むいて「食べてみい」と渡してくれた。
皮ごとかじると、すごい香りがした。
「毎日これ食べてるから長生きするさ」と言って笑った。
大宜味が長寿の里と言われる理由が、
その一言にぜんぶ詰まっていた気がした。