熊本市内から車で約1時間半。 そこに、九州とは思えない静けさがある。 冬の小国は、湯煙と杉の香りに満ちている。 観光地っぽい賑やかさは、ここにはない。 ただ、温泉があって、森があって、時間がゆっくり流れている。 それだけで、十分すぎるほど来る理由になった。
小国のおすすめスポット
杖立温泉|川沿いに湯煙が立つ、迷い込んだような路地の町
到着したのは、朝9時ごろだ。
川の上に、もわもわと白い煙が漂っている。
最初、霧か。
違う、全部温泉の湯煙だ。
杖立川沿いに旅館が並び、その隙間に細い路地が走る。
車では入れない道を、ひたすら歩いた。
石畳ではなく、ちょっとくたびれたコンクリートの坂。
それがかえって、いい。
「蒸し湯」が名物だと聞いている。
脱衣所で服を脱ぎ、温泉蒸気だけが充満した小部屋に入る。
温度は42〜43℃くらいだろうか。
10分もいると、全身から汗が止まらなくなる。
サウナとは違う、じわじわした熱さ。
じっとしているだけで、体の芯まで温まっていく感覚がある。
冬の杖立は、湯煙が多い分だけ、写真映えがすごい。
朝早い時間が、一番きれいだ。
わいた温泉郷|地面が生きている。轟音と蒸気の別世界
杖立から車で20分ほど走ると、雰囲気がガラッと変わった。
地面のあちこちから、蒸気が吹き上がっている。
音がうるさいくらいに、ぼこぼこと湧いている。
「わいた」の名前の通り、本当に沸いている。
ここは温泉地というより、地熱地帯に近い印象だ。
大地のエネルギーが、そのまま地表に出てきている。
「はげの湯温泉」周辺には、露天風呂が点在している。
料金は500円前後のところが多い。
のれんをくぐると、視界が開けて、阿蘇の山が見える。
外気温は5℃以下だ。
それでも、湯に肩まで浸かれば関係ない。
冷たい空気と熱い湯の温度差が、気持ちよすぎた。
近くの「岳の湯」地区では、地熱を使った「地獄炊き」も体験できる。
温泉蒸気で野菜や卵を蒸すやつだ。
卵1個100円で、めちゃくちゃ旨かった。
シンプルなのに、忘れられない味になった。
小国杉の木立|静かすぎて、時間の感覚がなくなる森の中
温泉ばかりに気を取られていたら、もったいない。
小国には、杉がある。
小国杉は樹齢100年を超えるものも珍しくない。
幹が太くて、まっすぐで、見上げると空が細く見える。
冬の午後、誰もいない杉林の中を歩いた。
風の音と、自分の足音だけ。
落ち葉の上を踏むたびに、かさかさと音がする。
杉の香りがすごかった。
深呼吸するたびに、体の中の空気が入れ替わっていく気がした。
大げさじゃなく、そういう感覚があった。
小国の道の駅「ゆうステーション」周辺にも、小国杉を使った建築や小物が多い。
杉の香りがするコースターを1枚300円で買った。
今も部屋に置いてある。
派手なスポットじゃない。
でも、温泉の後にここを歩くと、完全に体がリセットされる。
セットで体験してほしい場所だ。