水の音が、全部かき消してくれる。 仕事のこと、SNSのこと、明日のこと。 奥入瀬に足を踏み入れた瞬間、そういうものが全部どうでもよくなった。 渓流沿いの遊歩道は約14km。 歩き始めると、時間の感覚がなくなる。 ここは、そういう場所だ。
奥入瀬のおすすめスポット
阿修羅の流れ|怒っているのか、嘆いているのか
奥入瀬の中で、一番「やばい」と思ったのがここだ。
水が流れているというより、岩を叩きながら暴れている。
阿修羅という名前、伊達じゃない。
音が違う。
他の流れより、ずっと低くて重い。
近くに立つと、足元が少し揺れている気がした。
特に秋がすごかった。
赤と黄色に染まったモミジが水面に映って、その上を白い飛沫が走る。
写真を撮ろうとしたけど、何枚撮っても現実には追いつかない。
遊歩道から5メートルも離れていない場所にある。
それなのに、あの迫力。
奥入瀬はざっくり14kmの渓流沿いを歩くルートで、ここは中間あたりに位置する。
バスの停車ポイントにもなっているので、体力に合わせて区間だけ歩くのもいい。
ただ、通り過ぎるだけはもったいない。
5分でいいから、ただ立って聞いてほしい。
雲井の滝|名前より、本物のほうが静かだ
「雲井」という名前を聞いて、もっと幻想的なものを想像している。
実際に見たら、想像とは違う種類の美しさがあった。
高さ約20m。
糸みたいに細くて、まっすぐ落ちてくる。
轟音ではなく、しゃあ、という音。
静かな滝だ。
冬に来たとき、滝の縁が凍り始めている。
水と氷が半分ずつ、みたいな状態。
あれは秋には見られない顔だ。
どちらの季節に来るかで、まったく別の場所になる。
遊歩道から少し入った場所にあって、案内板を見逃すと通り過ぎる。
実際に一度、通り過ぎた。
戻ってよかった。
奥入瀬には大小の滝が点在しているけど、雲井の滝は「寄り道する価値がある」筆頭だ。
五段の滝、白糸の滝など他も見てまわると、それぞれ全然違う表情で飽きない。
十和田湖|静けさが、少し怖いくらいだ
奥入瀬渓流を14km歩くと、たどり着く。
十和田湖。
渓流のあの騒がしさが嘘みたいに、湖は静かだ。
風がない日は、水面が鏡になる。
空が水の中にある。
湖岸に立って、しばらく何もしない。
することがない、というより、何かする気になれない。
周囲約46km、最大水深327m。
数字で聞くより、実際に立つほうが深さを感じる。
底が見えない色をしている。
冬は観光客がぐっと減る。
1月〜2月はほぼ誰もいない場所もある。
静けさが際立って、これはこれで正解だ。
湖畔に高村光太郎の「乙女の像」がある。
モデルは妻・智恵子。
2体の女性像が向き合っている。
混んでいない時間に、ゆっくり見てほしい。
夕方の光の中で見ると、また印象が変わる。
蔦沼|朝4時に起きた価値が、あった
蔦沼に行くなら、朝イチしかない。
日の出直後の1時間だけ、紅葉が沼に映える。
その時間を逃すと、ただの沼になる。
10月上旬〜中旬がピーク。
駐車場は朝5時には満車になる。
前日から近くに泊まるか、暗いうちに動くか。
どちらにしても、気合いが要る。
実際に行ったのは10月12日。
朝4時に宿を出た。
駐車場に着いたのが4時45分。
既に10台以上いた。
沼への遊歩道は約1km。
ヘッドライトをつけて歩く。
暗い森の中を歩くのは、少し緊張した。
夜明け直前、空が薄紫になり始めた。
沼の前に人が並び始める。
カメラを持った人が多い。
そして、赤が水面に現れた。
息を呑む、というのはこういうことだ。
声が出ない。
静寂の中で、みんなシャッターを押している。
あの朝のことは、たぶんずっと覚えている。
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