硫黄の匂いが、鼻をついた瞬間に分かる。 ここは普通の場所じゃない、と。 青森の果て、下北半島の山の中。 「死者が集まる場所」として千年以上語り継がれてきた。 怖いのか、神聖なのか。 その答えは、足を踏み入れてみないと絶対に分からない。
恐山のおすすめスポット
恐山菩提寺|風車が回るたびに、何かが揺れる
総門をくぐると、空気が変わった。
気温が下がった気がした。
風車だ。
色とりどりの風車が、境内のあちこちで回っている。
子どもを亡くした親が、供養のために置いていく。
それが何百本も、風に揺れている。
参拝料は500円。
朝6時から入れる。
早朝に来てよかった。
観光客が少ない分、静寂がある。
硫黄の白煙が境内の隅から上がっていて、
鳥居と煙と風車が同じ視界に収まる。
奥に進むと「地獄」と呼ばれる荒涼とした岩場が広がる。
血の池地獄、重罪地獄。
それぞれに名前がついている。
グロテスクではなく、静かな怖さだ。
岩の隙間から温泉が湧いていて、触ると熱い。
この土地が確かに生きている証拠だ、。
宇曽利湖|この世のものとは思えない青だ
菩提寺の奥を抜けると、突然視界が開く。
エメラルドブルーの湖が、目の前に現れた。
宇曽利湖。
カルデラ湖で、強酸性の水。
pHはなんと約3.5。
魚はほとんど住めない。
だから水が澄んでいる。
だから、この世のものとは思えない色をしている。
湖畔は白砂の浜が広がっている。
「極楽浜」という名前がついている。
地獄の隣に、極楽がある。
その対比が、なんとも恐山らしかった。
湖面はほとんど波がなく、鏡のようだ。
静かすぎて、自分の呼吸が聞こえる。
観光客が数人いたけれど、誰も大きな声を出していない。
自然とそういう気持ちになる場所だ。
岸辺に立って、しばらく動けない。
5分か、10分か。
よく覚えていない。
カルデラの大地|硫黄と岩と、むき出しの地球
恐山はそのものがカルデラだ。
直径約20kmの火山性盆地の中に、すべてがある。
境内の「地獄」エリアを歩くと、地面から白煙が上がっている。
足元の岩が黄色く染まっている。
硫黄の結晶が、岩にこびりついている。
ここに立つと、地面の下がまだ動いていることを思い知る。
きれいに整備された「観光地」ではない。
荒涼として、むき出しで、少し怖い。
それがいい。
菩提寺には温泉も湧いている。
参拝者は無料で入浴できる。
熱めの湯が4つの湯小屋に分かれている。
シャンプーや石けんは使えないけれど、
硫黄泉の肌触りはやわらかかった。
旅の疲れがすっと抜けていく感覚があった。
このカルデラの中に、地獄と極楽と温泉が詰まっている。
日本にこんな場所があるのか。
来るまで、本当に知らない。
モデルコース
恐山への行き方
HUB CITY
盛岡(拠点都市)から行ける旅先を見る →