東京から特急で1時間ちょっと。 なのに、着いた瞬間に時代が変わる。 大多喜は、城下町の空気がそのまま残っている場所だ。 派手な観光地ではない。 でも、歩けば歩くほど、何かがじわじわと染み込んでくる。 そういう旅が、たまらなく好きだ。
大多喜のおすすめスポット
大多喜城|天守閣よりも、登る途中の空気が好きだ
本丸跡に建つ天守は、昭和50年に復元されたもの。
歴史的な「本物」を期待すると、少し肩透かしだ。
でも、そこじゃない。
城へ向かう石段を登りはじめた瞬間、静かさが変わった。
木々の隙間から光が落ちて、石畳が苔で濡れている。
入場料は200円。
その安さで、この空間に入れるのか。
天守の4階から見下ろすと、大多喜の町がそのまま広がる。
山と川と、古い屋根たち。
現代の建物がほとんど目に入らない。
どの角度から撮っても、絵になる景色だ。
本丸跡には薬草園もある。
ひっそりと、でも丁寧に手入れされている。
誰かが大事に守っている、というのが伝わってくる場所だ。
養老渓谷|11月の紅葉より、滝への道が本番だ
養老渓谷、と聞くと「渓谷美」みたいな言葉が浮かぶ。
でも実際に歩くと、もっと体感的だ。
川沿いの遊歩道は、足元が濡れている箇所が多い。
11月の終わりに行ったが、葉がちょうど燃えている。
赤と橙と、少し残る緑。
その色が、川の水に映っている。
弘文洞跡まで歩いて約30分。
地図では近く見えるが、実際は結構な道のりだ。
運動靴じゃないと、後悔する。
粟又の滝に着いたとき、声が出た。
落差は9メートルほどと小さいが、横に広がる水のカーテンが美しい。
ずっと見ていられる。
観光バスで来る人も多いが、歩いて来た人だけが感じる達成感がある。
そこに来るまでの道が、すでに旅だ。
小湊鐵道|列車を待つホームで、旅がはじまった気がした
五井駅から乗り込む小湊鐵道は、単線のワンマン列車だ。
車内は木の香りがする、というほどではない。
でも、なんとなく懐かしい。
窓が大きくて、景色がよく見える。
春は菜の花と桜が沿線を埋め尽くす。
その時期に乗ると、車内で誰かが声を上げる。
知らない人なのに、なんとなく笑顔になる。
上総中野駅ではいすみ鉄道と接続している。
乗り換えに数分しかない時もあるから、時刻表は必ず確認する。
養老渓谷駅のホームは、木造で古い。
待合室に石油ストーブが置いてある冬の朝。
そういう細部が、記憶に残る。
鉄道ファンじゃなくても乗ってほしい路線だ。
ただ乗っているだけで、何かが整っていく感覚がある。
その感覚が、旅に来た理由になったりする。