高知の山奥に、樹齢3000年の杉がある。 国道32号を北上すると、急に空気が変わる。 ひんやりとして、濃くて、少し甘い。 大豊は、そういう場所だ。 観光地という感じはまったくしない。 でも、一度来たら忘れられない。 そういう場所が、山の中にひっそりとある。
大豊のおすすめスポット
日本一の大杉|3000年分の静けさが、そこにある
近づくにつれて、首が自然と上を向いた。
樹高60メートル。
幹回りは20メートルを超える。
数字で聞いても正直ピンとこない。
でも実際に目の前に立つと、体が先に反応した。
なんとも言えない圧迫感、というより、重力みたいなもの。
「これ、縄文時代から生きてる木か」と思った瞬間、足が止まった。
杉は2本ある。
雄杉と雌杉と呼ばれていて、仲良く並んでいる。
幹に触れると、ひんやりして少し湿っている。
夏でも涼しい。
蝉の声だけが遠くから聞こえてくる。
ここは「神様がいる」という感覚が、スーッと体に入ってくる場所だ。
観光地化されすぎていないのがいい。
木の周りを歩くだけで、30分くらい経っている。
そういう場所。
杉の大杉公園|大杉のそばで、ただぼんやりする午後
日本一の大杉のすぐそばに、小さな公園がある。
整備されすぎていない。
そこがいい。
ベンチに座ると、大杉が視界に入ってくる。
コンビニもない。
スマホの電波も怪しい。
でもそれが、ここでは正解な気がした。
公園内には売店が1軒あって、大杉グッズや地元のお土産が売っている。
ゆずのジュース(200円)を買って、ベンチで飲んだ。
酸っぱくて、冷たくて、やけにおいしかった。
川のせせらぎも聞こえてくる。
夏の昼下がり、風が通り抜けて、眠くなった。
「旅に来て昼寝するってこういうことか」。
トイレも駐車場もある。
アクセスの起点として使いやすい場所でもあった。
ただ、夕方以降は人が減って静かになりすぎる。
明るいうちに動いたほうがいい。
豊楽寺(薬師堂)|山の中に、平安時代が残っている
大杉から車で10分ほど山を下ったところにある。
看板が小さくて、一度通り過ぎた。
細い参道を歩いて、薬師堂の前に立った瞬間、空気が変わった。
建物が古い。
本当に古い。
平安時代後期の建造で、国宝に指定されている。
でも、ガラスケースの中に飾られているわけじゃない。
今も現役の、お堂として、山の中に立っている。
屋根の曲線が独特で、思わず写真を何枚も撮った。
中に入ると、薬師如来像が安置されている。
静かで、薄暗くて、線香の匂いがした。
「1000年前の人もここに来たんだな」と思ったら、急に現実感がなくなった。
観光客は少ない。
というかほぼいない。
平日の午後2時、完全に独り占めだ。
入場料200円が、なんか申し訳ないくらいの場所だ。