リアス式海岸の奥に、大槌という町がある。 東日本大震災で壊滅的な被害を受けた場所だ。 それでも海は青く、波は静かに砂を撫でている。 何かを確かめたくて来た。 来てみたら、言葉より先に景色が胸に刺さった。 ここの空気は、ほかの海とは少し違う。
三陸(大槌)のおすすめスポット
吉里吉里海岸|何もない、だからこそ全部ある
国道45号から少し入ると、急に視界が開ける。
砂浜が現れる。
ひとけがほとんどない。
平日の午前10時、観光客はゼロ。
地元のおじさんが一人、遠くで釣り糸を垂らしている。
砂は白くて細かい。
足が沈む感覚が気持ちいい。
靴を脱いで歩いた。
波の音だけが鳴っている。
BGMも案内板もない。
ただ海と砂と空だけがそこにある。
吉里吉里という地名が好きだ。
語感がやわらかくて、どこかユーモラスで。
でもここに立つと、そんな軽い気持ちは一瞬で消えた。
2011年、この砂浜にも波が来た。
それを知った上で見ると、青さが違って見える。
夏に来るなら早朝がいい。
7時前なら完全に貸し切りだ。
大槌湾|湾を見下ろすと、町の歴史が重なった
高台から大槌湾を見下ろした。
穏やかだ。
信じられないくらい穏やかだ。
湾の形がきれいだ。
リアス式特有の入り組んだ地形が、湾を守るように囲んでいる。
カモメが数羽、低空を飛んでいた。
ここに立つと、震災前の風景と震災後の風景が頭の中で重なる。
地元の人に聞いた話では、湾沿いの商店街は跡形もなくなったという。
今は復興住宅と新しい道路が並んでいる。
でも海は変わっていない。
その事実が、なんとも言えない気持ちにさせる。
夕方16時ごろ、光が湾に差してきた。
水面がオレンジに染まった。
写真を撮ろうとして、やめた。
目に焼き付けたかった。
ここは観光地ではない。
生活の海だ。
それを忘れずにいたい。
蓬莱島|小さな島に、大槌の象徴が宿っている
大槌湾に浮かぶ小さな島、蓬莱島。
別名「ひょっこりひょうたん島」。
そう、あのNHKの人形劇のモデルになった島だ。
陸から見ると、こんもりと緑が盛り上がっている。
確かにひょうたんの形をしている。
思わず笑ってしまった。
渡れるのかと思ったら、現在は上陸不可。
対岸から眺めるだけだ。
でもそれで十分だ。
港近くの堤防に座って、しばらく島を眺めた。
観光船は出ていない。
地元の漁船が島の横をゆっくり通り過ぎた。
人形劇「ひょっこりひょうたん島」は1964年から放送された。
その後、島は震災の津波で大きなダメージを受けた。
それでも島の形はちゃんと残っている。
不思議な存在感がある島だ。
小さいのに、やたら記憶に残る。
大槌に来たら、必ず見てほしい。