フェリーを降りた瞬間、猫が出迎えてくれた。 観光客ではなく、猫の島の住人として迎えられたような気がした。 佐柳島は、多度津港からわずか60分の場所にある。 なのに、時間の流れがまるで違う。 猫と、墓と、岬の風。 そういうものが、島の日常としてそこにあった。
佐柳島のおすすめスポット
飛び猫スポット|シャッターを押す前から、もう負けてる
港から歩いて5分も経たないうちに、猫が現れた。
1匹ではない。
気づけば、周りに7〜8匹いた。
島の人口は約60人。
猫の数は、それを軽く超えると聞いた。
飛び猫スポットは、集落の外れにある石垣の前。
おやつを持って待っていると、猫が石垣の上に集まってくる。
そのうち1匹が、ふいに飛んだ。
シャッターを切る間もなく、着地している。
何度も通った。
午前中の光が斜めに当たる時間帯が一番いい。
10時前後がねらい目だ。
猫によって個性がある。
飛ぶやつ、飛ばないやつ、人の膝に乗ってくるやつ。
それを見ているだけで、1時間が過ぎている。
餌づけは禁止されていない。
でも島のルールとして、節度を持ってほしい。
それだけが気になった点だ。
長崎の鼻|島の果てで、音が全部消えた
集落から北へ向かう道は、舗装が途切れる。
そこから先は山道になった。
30分ほど歩いた先に、長崎の鼻がある。
岬の突端に立ったとき、正直、息を飲んだ。
360度、海しかない。
本土も、他の島も、ほとんど見えない。
ただ、瀬戸内の海と、空だけがある。
風が強かった。
帽子を押さえながら立っていると、猫がまた1匹来た。
飛び猫スポットとは別の猫だ。
島中に、猫がいる。
ここで食べたおにぎりの味が忘れられない。
前日に多度津のスーパーで買っておいた普通のおにぎり。
なのに、なぜかおいしかった。
場所が食べ物の味を変えることがある。
帰り道、足元に小さな野草が咲いている。
名前はわからない。
でも、それでよかった。
わからないまま、きれいだ。
両墓制の墓地|怖いというより、静かだ
佐柳島に来た理由のひとつが、これだ。
両墓制。
埋め墓と参り墓、2つの墓を持つ風習のこと。
全国的にも珍しく、佐柳島は現在も実際に使われている数少ない場所だと聞いた。
墓地は集落の山手にある。
昼間に行ったが、人の気配はない。
猫だけがいた。
埋め墓は、土葬の跡がそのまま残っている。
丸みを帯びた石が積まれただけの素朴な墓。
参り墓は、本土の墓石に近い形。
同じ人の墓が、2カ所に存在する。
観光スポットとして紹介されることもあるが、実際の霊場だ。
カメラを構えることをためらった。
記録より、感じることを優先した時間だ。
生と死が、島の日常のすぐそばにある。
それが、佐柳島というところだ。
猫が墓の石の上で、日向ぼっこをしている。
そのバランスが、島そのものだ。
モデルコース
佐柳島への行き方
HUB CITY
高松(拠点都市)から行ける旅先を見る →