高松市街から車で30分。 でも、別の時間が流れている場所がある。 山あいに分け入ると、急に空気が変わる。 杉の香り、川の音、湯けむり。 塩江は、香川でいちばん奥に隠れた温泉郷だ。 「秘境」という言葉は軽々しく使いたくない。 でもここは、その言葉がしっくりくる。
塩江のおすすめスポット
塩江温泉街|ひなびた湯の街に、昭和の残り香がある
旅館が数軒、土産屋が数軒。
それだけの小さな温泉街だ。
派手さはまったくない。
でも、それが正直でいい。
日帰り入浴できる施設が温泉センターにある。
料金は500円ほど。
内湯のみのシンプルな造り。
温度は少し高め、42度前後。
肌がすべすべになる、単純硫黄泉だ。
驚いたのは、地元のおじいさんたちが普通に使っていたこと。
観光地じゃなく、生活の湯なんだと気づく。
脱衣所で世間話に混ざって、30分が過ぎている。
街を歩くと、廃業した旅館の看板が残っている。
かつてはもっと賑わっていたんだ。
でも今の静けさは、悪くない。
むしろ居心地がいい。
湯上がりに川沿いを歩くと、体の熱がゆっくり冷えていく。
その時間が、ここの本当の価値だ。
内場ダム湖|誰もいない湖面に、山が映っている
温泉街から車で10分ほど奥に進む。
道が細くなって、少し不安になった頃に着く。
内場ダム湖は、周囲約4kmの静かな湖だ。
観光地としての整備はほぼない。
駐車場も小さい。
売店もない。
それがいい。
湖面を見た瞬間、声が出た。
色が違う。
深い緑がかったブルーで、日本の山の中とは思えない透明感がある。
雨の翌日だったせいか、水量も多く迫力があった。
周辺には遊歩道のような細い道が続いている。
整備されているとは言えないけれど、歩けた。
鳥の声だけが聞こえる。
人に会わない。
1時間、ひとりでぼんやりした。
紅葉の時期は特別らしい。
11月上旬、山が赤と黄色に染まって水面に映る。
それを見るためだけに来る価値がある、と地元の人が言っている。
次は絶対その時期に来る。
鵜の瀬不動|苔むした石段の先に、空気が変わる場所があった
地図で見つけて、半信半疑で向かった。
ナビが「目的地付近です」と言った時、まだ山道の途中だ。
鵜の瀬不動は、山の斜面に張り付くようにある小さな不動尊だ。
石段が急で、濡れていると滑る。
手すりにつかまりながら、ゆっくり上った。
上りきると、岩壁から水が滲み出ている。
滝と呼ぶには小さいが、絶えず流れている。
その水の音だけが聞こえる。
境内は人ひとりで手入れしているんだろうと思う雰囲気だ。
線香の煙が漂っている。
誰かがつい最近来ていた気配。
観光地ではない。
スタンプラリーの対象でもない。
でも、ここが今回の旅でいちばん印象に残っている。
うまく説明できないけど、来てよかった場所がある。
そういう場所だ。
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