高知県の西側、太平洋に面した小さな港町。 須崎は、観光地っぽさがほとんどない。 それが逆に、刺さった。 独自進化した鍋焼きラーメン、海に向かって建つ神社、漁師の空気が残る港。 「わざわざ来る理由」が、ちゃんとある場所だ。
須崎のおすすめスポット
橋本食堂|土鍋が運ばれてきた瞬間、湯気で前が見えなくなった
須崎に来た理由の、8割はこれだ。
鍋焼きラーメン。
土鍋のまま出てくる、醤油ベースのラーメン。
聞いていたけど、実物は想像より熱かった。
橋本食堂に着いたのは、開店5分後の11時5分。
すでに先客が3組いた。
席に座ってすぐ、注文は一択。
鍋焼きラーメン、900円。
待つこと約10分。
ぐつぐつ言いながら、土鍋が届く。
細めのストレート麺、甘辛い醤油スープ、半熟玉子、ちくわ、ねぎ。
シンプルなのに、なぜか唯一無二の味がする。
スープが沸騰しているから、食べるペースを急かされる感じがある。
でもそれが、なんか良い。
須崎の鍋焼きラーメンは、この町で生まれてこの町で育ったもの。
他の土地で再現しようとしても、たぶん無理だ。
ここで食べるから、美味しい。
鳴無神社|海に突き出た鳥居の前で、しばらく動けない
「土佐の宮島」という呼び名を聞いている。
正直、大げさかな。
着いたら、黙った。
海岸線のすぐそばに、鳥居が立っている。
満潮時は、海の中に浮かんで見える。
空と海と朱色だけが、視界に入る瞬間がある。
参道を歩くと、風が強くなった。
潮の匂いがした。
境内に入ると、静かだ。
観光客が少ないせいか、音がない。
祭神は一言主神。
ここを訪れた漁師たちが、長い時間をかけて守ってきた場所だと分かる。
説明板より、空気感が語っている。
駐車場から境内まで、歩いて3分もかからない。
それだけの距離で、完全に日常から切り離される。
夕方に来れば、鳥居越しに沈む夕日が見える。
これは、来た時間が正解だ。
須崎港|観光港じゃない。漁師の港だ
須崎港は、きれいに整備された観光港じゃない。
それが良かった。
朝7時に行った。
漁船が何隻も停まっていて、荷下ろしの声が聞こえる。
魚の匂いがした。
カモメが騒がしかった。
港の端まで歩くと、水平線が広がった。
太平洋は、近くて遠かった。
須崎港は、かつおの水揚げで栄えた港。
今も現役の漁港として動いている。
観光客向けの施設はほぼない。
だから、本物の港の空気がそのまま残っている。
近くの「道の駅かわうその里すさき」に立ち寄ると、鮮魚や地元の加工品が並んでいた。
かつおのたたきは、1パック600円前後。
保冷バッグがあれば、買って帰る価値がある。
港をただ歩くだけの時間。
それが須崎旅行で、意外と一番長く頭に残っている。