将棋の駒が、町のあちこちに溶け込んでいる。 土産屋の軒先にも、公園のベンチにも。 天童はそういう町だ。 山形の内陸部、盆地に広がるこの場所は 将棋駒の生産量が全国シェア95%を超える。 それだけじゃない。 温泉も、桜も、ちゃんとある。 派手さはないけれど、来るたびに何かを持ち帰れる町だ。
天童のおすすめスポット
舞鶴山公園(人間将棋)|標高241m、桜の山で人が駒になる
4月中旬、山が桜でピンクに染まるころ。
舞鶴山の頂上に、巨大な将棋盤が現れる。
縦横9マス、一辺が約1mの升目に
武者姿の人間が駒として並ぶ。
これが「人間将棋」だ。
実際に見るまで、写真だと規模感がわからない。
山頂から見下ろすと、思ったより広い。
そして、思ったより静かだ。
棋士が手を読む時間、会場が息をのむ。
あの緊張感は現地でしか味わえない。
山頂へはロープウェイで約3分、大人往復450円。
桜のピーク時は人出がかなり多い。
早めに行くなら9時台がおすすめだ。
展望台から天童の盆地を一望できる。
市街地と山並みが同時に見えて、
ここが盆地の町なんだと初めて実感した。
人間将棋は毎年4月第3土・日曜に開催。
観覧は無料だが、ロープウェイは別途必要。
天童温泉|夜の温泉街が、思ったより静かでよかった
天童温泉に泊まったのは、人間将棋の前夜だ。
駅から歩いて10分かからない。
温泉街としての規模は小さめで、
夜8時を過ぎると人もまばらになる。
それがよかった。
旅館の大浴場は源泉かけ流しで、
お湯の色はほぼ無色透明。
くせがなくて、長湯しやすい。
泉質はアルカリ性単純温泉で
肌がするっとする感じは翌朝も続いた。
夕食は山形牛が出た。
よく「山形はどこで食べても肉がうまい」と聞くが、
本当にそうだ。
霜降りの加減が絶妙で、薄切りでも満足感が高い。
サクランボや芋煮など、山形の食材が一皿ずつ出てきて、
メニューを読まなくても季節がわかった。
日帰り入浴を受け付けている宿も多い。
料金は500〜800円程度が相場。
舞鶴山観光のあとに立ち寄るのがちょうどいい流れだ。
天童市将棋資料館|駒ひとつに、職人の時間が詰まっている
正直、「資料館」という名前に期待していない。
そういう施設にありがちな、
ガラスケース越しに見るだけの展示を想像していたから。
入ってすぐに、違うとわかった。
天童産の将棋駒の歴史や製造工程が
かなり丁寧に展示されている。
職人が手彫りで仕上げた駒の断面写真、
漆を何十回も重ねる「盛り上げ駒」の実物。
ひとつの駒に100時間以上かかるものもあると知って、
将棋を指さない人間でも手が止まった。
体験コーナーでは駒への書き込みが試せる。
墨と筆で「王将」と書いてみたが、
職人の作例と並べると、差が歴然だ。
入館料は大人210円と安い。
そのぶん、じっくり見る人が多い印象だ。
滞在時間は1時間あれば十分だが、
興味が出てくるともう少し長くなる。
天童駅前にあるので、帰りの電車前に立ち寄れる距離だ。