蔵王の麓に、ひっそりと湯煙が立ちのぼる町がある。 遠刈田温泉。 派手さはない。 でも、一度来たら手放せなくなる温泉地だ。 冬の空気が痛いくらい澄んでいて、 白い雪と白い湯気が混ざり合う景色は、 ここでしか見られないものだ。
遠刈田温泉のおすすめスポット
遠刈田温泉共同浴場|熱い湯と、地元の人のなかに飛び込む
入浴料は大人250円。
その安さに、少し身構えた。
扉を開けると、むわっと硫黄の匂いが来る。
地元のおじさんたちが、ごく普通に体を洗っている。
観光客向けの雰囲気は、一切ない。
湯船は2つ。
「神の湯」と「若の湯」で源泉が違う。
温度計を見たら47度を指している。
そのまま入ったら3秒で限界だ。
水で埋めながら、少しずつ慣らす。
10分もすると、体の芯まで温まってくる。
これが本物の温泉だ。
冬の朝7時から開いている。
雪の降る朝に、ここへ来てみてほしい。
地元の人と同じ時間が、静かに流れている。
みやぎ蔵王こけし館|かわいいより、怖いが先に来た
正直、こけしをなめている。
館内に入ると、数千体のこけしが並んでいる。
一体一体、表情が違う。
笑っているのか、怒っているのか、わからないものもある。
でも、見ているうちに引き込まれた。
遠刈田系のこけしは、顔が大きくて胴が細い。
花の模様が鮮やかで、他の産地とは全然違う。
スタッフの方に聞いたら、ろくろの技法も異なるらしい。
絵付け体験もやっていて、所要時間は約40分。
料金は1,300円から。
白木のこけしに、自分で色を乗せる。
思ったより難しくて、思ったより楽しかった。
お土産売り場で、小さなこけしを1体買った。
今も机の上に置いてある。
毎朝、じっとこちらを見ている。
神の湯|夜、ひとりで入りに行った
共同浴場とは別に、宿泊施設に近い「神の湯」がある。
夜9時を過ぎた頃、もう一度だけと思って向かった。
雪がぽつぽつ降っている。
足元の石畳が濡れていて、街灯の光に反射している。
脱衣所には誰もいない。
浴室も、貸し切りだ。
無色透明の湯が、静かに満ちている。
pHは8.4のアルカリ性。
肌がするっとなる感触が、確かにあった。
外の雪の音だけが聞こえる。
温泉街の夜は、思っているより静かだ。
10分で体が赤くなった。
上がって外に出たら、冷気が気持ちよかった。
この感覚のために、冬に来てよかった。
ここはその夜の、一番いい時間だ。