東北の奥地に、霧がかかっている。 遠野は、そういう場所だ。 柳田國男が『遠野物語』を書いたのは1910年。 でも今も、あの本に出てくる空気がそのまま残っている。 河童がいる川があって、座敷わらしの話が普通に語られる。 信じる信じないじゃなくて、信じたくなる雰囲気がある。 それが遠野だ。
遠野のおすすめスポット
カッパ淵|本当にいそうで、少し怖かった
常堅寺の脇を抜けて、細い道を歩く。
5分もしないうちに、淵が見えてくる。
その瞬間、空気が変わった。
湿っていて、暗くて、川の音だけが響いている。
夏の昼間なのに、ひんやりしている。
淵の縁に、赤いよだれかけをした小さな河童の像が立っている。
キュウリを糸に結んで垂らすと、河童が食いつくという話が残っている。
実際に試している人を何人か見た。
誰も釣れていなかったけど、なんとなく見守ってしまった。
水は透明で、底まで見える。
深くはないのに、覗き込むのを少しためらった。
何かいる気がして。
そういう気分にさせる場所だ。
夕方は絶対に一人で来ない方がいい。
伝承園|昔の暮らしが、そのまま置いてある
入場料は320円。
安い。
でも中に入ると、その値段が信じられなくなる。
広い敷地に、江戸時代の曲り家がそのまま移築されている。
馬と人が同じ屋根の下で暮らしていた建物だ。
土間が長くて、天井が低くて、囲炉裏の煤が梁に染み込んでいる。
何百年分の生活の匂いがした。
オシラサマ堂には、1000体を超えるオシラサマが奉納されている。
オシラサマというのは桑の木に人の顔を彫った神様で、遠野に古くから伝わる。
薄暗い部屋に並んでいるのを見たとき、美しいと思うより先に、手を合わせたくなった。
ここはただの展示施設じゃない。
人が実際に暮らして、祈っていた場所の続きがある。
それを全身で受け取れる。
チャグチャグ馬コ|6月の朝、あの鈴の音を聞いた
毎年6月の第2土曜日だけ見られる。
その1日のために、遠野の旅を組んだ。
チャグチャグ馬コは、滝沢市の鬼越蒼前神社を出発して盛岡の八幡宮まで14.5kmを歩く行列だ。
100頭近い馬が、色鮮やかな飾りをつけて街道を歩く。
近くで見ると迫力がすごい。
馬体の大きさと、飾りの細かさのギャップが面白い。
「チャグチャグ」という名前は、馬につけた鈴の音からきている。
実際に聞くと、確かにそう聞こえる。
チャグチャグ、チャグチャグ。
静かな朝の空気に、その音だけが広がっている。
午前中に終わるので、午後は遠野市内を回れる。
盛岡と遠野をセットにする行程がちょうどいい。
1年に1日だけの音を、一度聞いてほしい。
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遠野への行き方
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